米中報復関税で欧州大手が5Gインフラ攻勢 日本勢の“漁夫の利”は望み薄
米国と中国が23日、互いに第2弾の関税を発動し両国の通商摩擦がエスカレートした。今後、中国製品の対米輸出が減れば、代わって日本製品の米国でのシェアが拡大すると期待する声もある。だが、米国では次世代移動通信(5G)のインフラ整備をめぐり、既に欧州企業が参入を加速しているとされ、日本勢は後手に回っている。中国メーカーの勢いがそがれても日本が大きな恩恵を受けられるとはかぎらない。
トランプ米政権による対中制裁関税の主な標的は、習近平政権が振興に力を入れる5G関連などのハイテク製品だ。制裁関税以外にも、米政府は4月、華為技術(ファーウェイ)など中国メーカーの機器を米企業が導入しづらくなる規制を強化している。米国では今後、5Gに対応した基地局設置などが本格化する。中国メーカーが事実上、締め出されることで、「日本メーカーはシェア拡大の『漁夫の利』を得られる」とする市場関係者もいる。
ただ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「日本勢が米国の5G投資需要を取り込むのは難しい」と指摘する。
小林氏によると、ただでさえ日本メーカーの技術開発は遅れている上に、フィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソンなど欧州通信機器大手が中国の抜ける穴を埋めるべく、先行して米国市場へ食い込む動きを活発化しているからだという。
巻き返すには「日本での(無線インフラ整備などの)実績を示す必要がある」(小林氏)が、ハードルは高く、厳しい戦いになりそうだ。
大和総研の広野洋太研究員は、さらに米国が2000億ドル分の制裁関税を発動すれば、日本の国内総生産(GDP)は0.02%押し下げられると分析する。通商摩擦の激化で世界の2大市場である米中の景気が後退し、日本は輸出や企業の設備投資、消費などが落ち込むと想定されるためだ。2大経済大国の貿易戦争は、日本にとってもやはりマイナス影響が大きい。(山口暢彦)
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