政府外国人受け入れ拡大 実効性ある支援策が急務

 
町のあちこちにポルトガル語の看板がある群馬県大泉町=4月25日(山口揚彦撮影)

 政府が外国人労働者の受け入れを拡大するのは、深刻な人手不足を補い、経済の成長力減退を防ぐためだ。しかし外国人が言語や文化の壁などで社会に溶け込めなければ、失業や失踪の増加、生活保護受給の膨張に伴う財政負担といったさまざまな問題が起こりかねず、実効性ある外国人の支援策が急務だ。

 「一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人材を幅広く受け入れる仕組みの構築は(日本経済にとって)急務だ」。安倍晋三首相は24日の関係閣僚会議でこう訴えた。

 人手不足は建設、介護などの分野を中心に加速している。5月の有効求人倍率は1・60倍と44年4カ月ぶりの1・6倍台に達した。

 理由の一つが少子化だ。現役世代を示す「生産年齢人口」(15~64歳)は現在の約7500万人から2030(平成42)年には約6900万人まで減る見込み。労働力不足を補うため政府は25年までに50万人の外国人を受け入れる考えだ。

 しかしこれまで受け入れに積極的だった自治体ではすでに、外国人の生活保護申請が急増しているといった問題も起きている。日本語が不自由で就職できないなどの事情があるという。

 このため安倍首相は閣僚会議で「外国人を社会の一員として受け入れ、円滑に生活できる環境を整備することが重要だ」と指摘。政府は日本語教育の充実や教育機関の適正管理などの支援策を想定するが、こうした対策も財源を国、自治体、企業のどこが負担するかといった調整の難しい課題がある。アイデアが「絵に描いた餅」にならないよう丁寧な議論が求められる。(山口暢彦)