通商摩擦 世界経済にリスク 甘い税収見積もり懸念も

 

 平成29年度の税収総額は過去3番目の高水準を確保したが、今後は米国と中国の貿易摩擦で世界経済が停滞するリスクもあり、経済成長と税収増加が続くか予断を許さない。過大に税収増を見積もり財政規律が緩めば、財政健全化が一層遠のく懸念もある。

 政府は30年度の税収総額も59兆1千億円と、29年度を約3千億円も上回る高い水準を見込む。海外経済や国内景気の改善による国内企業の好業績が続くとみているためだ。世界経済は3%台、日本経済は1%台の成長を続けると予想している。

 ただ、財務省は「米中の貿易摩擦による世界経済の減退リスクが顕在化すれば、30年度の税収総額が見積もりを下回る可能性はある」と警戒感も示している。29年度の税収が増えた最大の要因は、海外経済の改善で輸出依存度の高い国内製造業が好業績を記録し法人税収が16・1%増と大幅に増加したことにある。

 しかし、米国が今月6日に中国の知的財産侵害に対する制裁関税を発動し、中国も報復関税を発動する予定であるなど、米中の通商摩擦は激しくなる様相を呈している。この結果、米国を拠点に中国から部品を輸入している日本企業などへの業績への影響は少なくなく、「税収にも間接的に影響する」(財務省幹部)。

 また米中の貿易停滞で両国の景気が低迷すれば世界経済の減退リスクも高まり、株安や円高が日本企業を直撃しかねない。

 政府は6月決定した新しい財政健全化計画で、従来32年度としていた基礎的財政収支の黒字化目標時期を37年度に先送りした。前の計画で成長率や税収を過大に見積もり、改革が思った通り進まなかったためだ。リスクを軽視し甘い税収見積もりで歳出拡大を続ければ、これまでの二の舞いとなりかねない。(西村利也)