「現行の関係法令では不十分」 太陽光発電、国に立地規制を求める 山梨県議会が意見書

 
太陽光発電の立地規制などを求める意見書の提案理由を説明する浅川力三県議。後ろは白壁賢一議長=4日、山梨県議会(松田宗弘撮影)

 山梨県議会は最終日4日の本会議で、国に対して太陽光発電装置の立地規制の強化と、事業終了時の設備廃棄の仕組みを求める意見書を全会一致で可決した。県内各地に設置された太陽光発電設備には、住民の生活や治山など安全面の配慮に欠けるケースもある。県のガイドラインは十分に機能しておらず、県議会として設置を認定する資源エネルギー庁など国に、「現行の関係法令では不十分」と規制強化を求める。

 意見書は首相、衆参両院議長と、経済産業相など関係5閣僚に提出する。

 意見書は急斜面の山林で森林を伐採して設置された発電設備について、「景観阻害、住環境悪化だけでなく、土砂災害の発生が非常に危惧される状況」と指摘した。

 その上で、景観法、農地法、土砂災害対策法など「現行の土地利用法制で十分対応していない」と強調。法の不備を突いたり、法令を順守しない発電設備も少なくない現状を問題視し、法整備などによる規制の強化を求めた。

 このほか、事業者の破綻や撤退などで太陽光発電をやめる際、パネルなどの設備撤去と処分が「適切かつ確実に行われる仕組み」の整備を求めた。

 意見書を主導した白壁賢一議長は、「兵庫や和歌山などで規制条例ができているが、『FIT法』が設置推進だから拘束力がない。山梨県の『太陽光発電導入ガイドライン』もしかりだ」と指摘する。

 FITとは、資源エネルギー庁が所管する「再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度」(FIT)。同法は新規設置の認定基準を規定している。

 白壁議長は「県内では住民とのトラブルで訴訟まで起きている。太陽光発電は必要だが、どこにでも作っていいわけではない」と強調する。

 6月定例会の代表質問でこの問題を取り上げた浅川力三氏は、「北杜市では太陽光発電設備の近く畑に、大雨で土砂が流入して災害が起きた。八ケ岳南麓で景観破壊が進めば観光産業も大打撃だ」と憤る。

 県エネルギー政策課によると、昨年の県内の設備認定件数は1万8870件。このうち稼働済みは8478件だ。

 県はガイドラインを策定した28年度以降、246の事業者を指導し、事業地の変更やパネル面積の縮小などを促した。だが、同課は「規制権限がない中で、これが限界だ」という。

 後藤斎知事は浅川氏の質問に対し、「他県の条例の実効性や運用状況を見極め、検討していきたい」と条例化に前向きな姿勢を示した。

 甲府市議会も先月15日、同様の趣旨の国への意見書を議決。他の市町村議会にも、9月議会に向けて追随の動きがあるという。(松田宗弘)