株主総会で進むお土産廃止 招集通知に明記、昨年の1.4倍

 

 開催がピークを迎えつつある企業の株主総会で、出席した株主への「お土産」を廃止する企業が急増している。今シーズンも廃止を打ち出す企業が相次いでおり、招集通知に「配布しない」と明記した企業は昨年の約1・4倍に上る。個人株主にとって楽しみの一つでもあるお土産だが、インターネットを活用した議決権行使も広がる中、株主間の公平を理由に“過去の遺物”となるのか。

 三菱商事は平成27年から3年間、東日本大震災の復興後押しを名目に、しょうゆなど被災企業の商品を配ってきたが、今年はとりやめる。株主による継続購入につながるなど被災地支援の役目を果たしていたが、「今後は配当などで株主に報いていくというスタンスを明確にしたい」という。

 KDDIはイメージキャラクターをパッケージデザインに使ったミネラルウオーターなどの配布を廃止。モスフードサービスも「モスバーガー」で使えるチャージ式プリペイドカードなどの配布をやめる。三菱UFJ信託銀行によると、今年6月の総会の招集通知で配布しない旨を記載した企業は373社で、前年の270社から急増した。

 廃止理由として各社が口をそろえるのが「公平性」だ。地方在住などで総会に出席できない一定数の株主との不平等を解消するという理屈だが、「コストもかかり、お土産だけ受け取る株主が増えると運営に支障を来す」(関係者)といった側面もあるようだ。

 一方、一部株主からは不満も上がる。コマツは昨年のお土産だった自社ショベルカーのミニカーが好評だったとみられ、今年の廃止に株主から「残念」との声が出たという。廃止は出席者数にも影響しているもようで、今年から配布をやめた高島屋の5月22日の総会では出席者が約1100人から約460人に減った。

 それでもネット議決権行使など環境整備も進む中、今後もお土産廃止は拡大しそうだ。三井住友信託銀行証券代行コンサルティング部の斎藤誠部長は「日本企業でも『お土産を渡さない』という対応が“禁じ手”ではなくなってきた」とみている。(佐久間修志)