米中、過熱する神経戦 トランプ政権、中国製通信機器に規制強化
3日に北京で始まった米中の通商協議をめぐり、両国間の神経戦が過熱している。トランプ米政権は中国企業の通信機器の販売規制をちらつかせるなどして中国を牽(けん)制(せい)。中国側は自国産業育成を優先させる姿勢を改めて示し、米国に反発する。ただし中国には貿易戦争を避けたい本音もあり、今回の協議を時間稼ぎに使うとの見方もある。
協議では米国が問題視する中国による知的財産侵害が議論される見通し。米政権は中国がハイテク分野に活路を見いだす産業政策「中国製造2025」の推進のため、「米国の知的財産を窃取している」(米通商代表部高官)とみる。
こうしたなか米国防総省は2日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の携帯電話などを世界各地の米軍基地内で販売することを禁止すると発表した。中国当局が携帯電話を盗聴器として使ったり、通信機器を通じて機密情報を盗み出したりすることを防ぐ狙いだ。
また米メディアは2日、米政府が華為などの製品を調達することを規制する大統領令が検討されていると報道。数週間内に発令される可能性があるという。米紙ニューヨーク・タイムズによると、米国内の大学や企業での中国人の先進研究への参画を規制する検討も進められている。
一方、中国共産党の機関紙、人民日報系の環球時報は3日付の社説で、中国批判の背景にある中国製造2025の正当性を主張。「この政策は中華民族の偉大な復興の本質であり、外部からの圧力による放棄はありえない」と猛反発した。中国製造2025は経済規模にみあう技術力やブランド力が育っていない弱点をカバーする狙いで、高い重要性があるためだ。
ただし社説は協議について「米中貿易紛糾を正しく処理するスタートになることを望む」とも表明。報復関税や米国債売却の示唆など強硬姿勢を取りつつ、米側の妥協を引き出して穏便な幕引きを求める中国の焦りがにじむ。劉鶴副首相は協議で、表明済みの自動車関税の引き下げや外資規制の緩和を改めて示す見通し。さらに暗に中国製造2025の防衛と引き換えに、一段の中国市場の開放や輸入増を提案するとの見方もある。
しかし米国は協議にムニューシン財務長官やロス商務長官ら主要閣僚をそろえ、「中国への強い決意」(米政府関係者)を示す。歩み寄りは見通せず、「両者がとりあえず協議のテーブルに着くだけ」(米通商専門家)に終わるとの声もある。ある日中関係筋は「(中国は)ワシントンでの再交渉を求めるなど時間稼ぎを狙う」とみている。(ワシントン 塩原永久、黒瀬悦成 上海 河崎真澄)
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