米中貿易摩擦、みえない終着点 対中制裁品リスト案、米国内への影響回避に腐心

 
知的財産権侵害を理由にした中国への制裁措置を明らかにする(手前左から)トランプ米大統領と、ロス商務長官、ライトハイザーUSTR代表=3月22日、ホワイトハウス(ロイター=共同)

 米通商代表部(USTR)が公表した対中国制裁品目案からは、国内企業への配慮や、中国の輸出に決定的な打撃を与える品目の選定を避けるなどの腐心が透けてみえる。

 USTRが作成したリスト案では、中国が産業政策で重点分野に掲げるハイテク製品を狙った一方、米アップルのスマートフォンに使用される電子部品や、米メーカーに供給されるノート型パソコンなどは除外した。靴や衣類も盛り込まれておらず、「価格上昇を懸念する小売業者に配慮した」(ロイター通信)とみられる。

 また、大型航空機や通信衛星など「昨年に対米輸出の実績がない約200以上の品目がリストに掲載されている」(同)といい、中国企業の輸出に決定的な打撃を与える品目の選定を避けた可能性がある。

 これに対し、米国内の産業団体からは、関税適用によって部品の調達コストが上昇するとの懸念もあるが、中国の不公正な取引慣行の問題対処に本腰を入れるトランプ政権の姿勢を評価する声も聞かれた。IT業界団体の情報技術産業協議会(ITI)は3日の声明で、「関税は製品価格を上昇させ、米国民の消費者を罰することになる」と指摘し、関税ではなく、他国との協調によって中国に問題への対処を迫るべきだとした。

 調査機関の情報技術イノベーション財団(ITIF)は3日、「中国政府による通商政策の乱用を押し返そうとするトランプ政権は正しい」との声明を出したが、関税適用には反対だとした。モノづくりに不可欠な工作機械などの調達価格が上昇し、企業の設備調達意欲が減退する可能性があるとの懸念を示す。

 米有力企業でつくる米中ビジネス協議会も、中国の知的財産侵害をはじめとする問題の解決を望むとしながら、「制裁によらない方法での解決を期待している」と述べた。

 トランプ政権は今後、すでに公表した方針に沿って対中制裁を着々と進めるため、「報復の連鎖の終着点がみえない」(通商専門家)として、米中間の摩擦激化への警戒感が深まっている。(ワシントン 塩原永久)