「動く執務室」…金正恩氏、訪中に超ハイテク列車 祖父、父から格式継承アピール

 

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の訪中には、歴代最高指導者が利用してきた「1号列車」と呼ばれる特別列車が使われた。祖父や父からの格式継承を印象付けるだけでなく、車両には、さまざまな最先端仕様が隠されている。

 26日、緑色の車体に、黄色いラインが入った約20両編成の列車が厳重警備の中、中国の北京駅に到着する様子が映像にとらえられた。

 金正日総書記が2011年の訪中で乗車した車両に酷似していた。韓国メディアは、金日成主席の直系血族である「白頭(ペクトゥ)の血統」だけが利用を許される「1号列車」との見方を伝えた。同列車が通る前、別の車両の通過が確認されている。線路に危険がないか点検する特殊車両とみられ、後続列車に乗る人物の重要さを物語った。

 これまで北朝鮮の高官らは総じて航空機で訪中してきた。中国に厚遇された金委員長の叔父、張成沢氏や元首格の金永南(ヨンナム)最高人民会議常任委員長も例外ではない。

 高官レベルの訪中の大半は中朝メディアが即時報じている。帰国後にようやく公表された金総書記の訪中との大きな違いだ。

 金総書記は航空機を嫌い、訪中のたびに特別列車を用いてきたといわれる。金委員長は専用機を持ち、航空機のコックピットに搭乗する写真も報じられており、空路に抵抗感はないようだ。

 韓国の専門家は今回、あえて列車を選んだのは「祖父や父の路程をたどる意味があった」と指摘する。特別な関係にある中国を初めて訪れるのに格式の継承を強調した形だ。

 空港での露出を避けられる上、高い安全性という実用面での利点もある。車体は防弾鋼板で補強され、衛星の追跡を逃れるため、赤外線を吸収する特殊コーティングも施されているとされる。窓も防弾ガラスだ。

 最高指導者が乗る車内は、金総書記時代から世界最高級の家具や電子地図モニター、衛星電話を備え付け、さながら「動く執務室」といえる。医師や専属カメラマンを含む大勢の支援要員や必要機材を一気に運べる利点もあるという。(ソウル 桜井紀雄)