米政権、選挙見据えて自国産業保護 今後も「経済ナショナリズム」前面に
トランプ米大統領は鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を正式決定する一方、適用除外の余地を残して貿易相手に揺さぶりをかけている。当初の除外国と認定したカナダとメキシコには認定取り消しを、除外されなかった日本などには除外国認定をちらつかせ、貿易不均衡是正に向けた「取引」を迫る構えだ。トランプ政権は11月の中間選挙を控え、自国産業保護を優先する姿勢を鮮明にしている。
「どの国が米国を公正に扱うのか見てみよう」
トランプ氏は8日の正式決定に際し、適用除外とする国の選定では、米国の貿易赤字削減に協力する各国の取り組みも判断材料とする考えをにじませた。今回の米通商拡大法232条に基づく輸入制限は本来、安全保障上の脅威がある場合に発動される。適用除外を求める国は、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表との協議を通じて、関税適用の有無が判断されることになる。
23日に発動される関税の当初の除外国は米国が北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を進めるカナダとメキシコ。だが、トランプ政権は再交渉の進展次第で例外扱いを取りやめる構えだ。メキシコのグアハルド経済相は「関税とNAFTA再交渉は関係ない」と即座に反発している。
一方、カナダとメキシコのみが除外国とされたことに他の国や地域は異論を唱えている。同盟国である日本は「日本からの輸入は安保の脅威にならない」との立場だ。
しかし、適用除外の実現にはUSTRとの協議を経ねばならず、日本は自動車市場や農業分野で厳しい要求を突き付けられる可能性がある。
11月に中間選挙を控えるトランプ氏は鉄鋼産業の復興などの大統領選での公約を実現し、改めて有権者に「自国産業優先」の旗印をアピールしたい考え。トランプ氏は相手国が課す関税と同率の関税を米国側も課す「相互税」にも意欲をみせており、今後も「経済ナショナリズム」を前面に打ち出す公算が大きい。(ワシントン 塩原永久)
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