北担当のジョセフ・ユン米特使辞任 「テロ支援国家」再指定に不満か 米政府で対話機運低下も

 
ジョセフ・ユン氏

 日本政府は米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表の辞任について、表向き「外国政府の内部のことについてコメントは控えたい」(菅義偉官房長官)と静観の構えだ。ただ、ユン氏は北朝鮮との対話を模索する姿勢が際立っていただけに、米国の対北政策に影響もあるとみて分析を進めている。

 2月26日に辞任の方針が明らかになったユン氏は、日本外務省の知人に次のようにメールを送った。

 「個人的な事情で辞めることになった」

 具体的な辞任理由は記されていなかったが、日米外交筋は「ユン氏は米政権で最も北との対話重視のニュアンスを出していた」と語る。北朝鮮への挑発を繰り返すトランプ大統領に不満があったとみられている。

 ユン氏は昨年9月15日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した直後、核実験やミサイル発射を60日間行わなければ米朝対話に応じる考えを伝えていた。だが、北朝鮮が挑発行為を控えていた中、トランプ氏は11月20日に北朝鮮のテロ支援国家再指定を発表。北朝鮮側がユン氏とのチャンネルを重視しなくなったとの見方もあり、12月上旬には元国務省情報調査局北東アジア室長のジョン・メリル氏が北京で北朝鮮と極秘接触した。

 日本政府は米国の対北政策について、ティラーソン国務長官とマティス国防長官が対話に前向きなのに対し、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)が圧力重視と分析してきた。この構図は当面変わらないとみられるが、「対話派」の実務を担ってきたユン氏の辞任により、米政府内で対話機運が低下する可能性もある。