日銀、出口進めば市場動揺も 米欧に追随、過去の5回は混乱に直結

 
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 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が2月27日の初の議会証言で利上げペースの加速を示唆したことで、大規模金融緩和が長期化している日銀の次の一手への関心がさらに高まりそうだ。市場には、日銀が緩和策を手じまいする「出口戦略」に動く時期も遠くないとの見方がある。ただ、過去には米欧に続き日本が利上げに踏み切ったことで世界的不況に結びついた例があり、日銀が出口に進めば、新たな市場動揺の引き金を引くと懸念する声もある。

 「先頭ランナーの米国が利上げを加速し、2番手の欧州も出口に向かう中、市場は“6回目のジンクス”に不安を抱き始めている」。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストはこう説明する。ジンクスとは日米欧が景気過熱やインフレを抑止するため利上げで足並みをそろえた直後、ITバブル崩壊やリーマン・ショックといった世界的な危機が起きたことを指す。

 日米欧の金融市場は1973年の変動相場制移行から連動を強め、過去5回とも利上げ時期が重なった。利上げによる円高の進行を恐れる日本は実施する時期が最後になる傾向がある。

 今回は2015年12月にFRBが利上げを開始し、欧州中央銀行(ECB)も19年前後に利上げするとの観測が出ている。日銀がこの流れに続けば危機が再来しかねないというわけだ。

 だが、民主党政権で続いた歴史的円高を「異次元の金融緩和」で打破した安倍晋三政権にとって円高につながる出口戦略は「オウンゴールに近い」(高田氏)のも事実。トランプ米政権がドル安志向を強める中、再任が固まった黒田東彦総裁は28日の衆院財務金融委員会で、正常化が「経済にショックを与えることは避ける」と強調しており、当面は動きづらい状況だ。

 手をこまぬいている間に景気がピークアウトすれば米国は逆に利下げを始めざるを得ない。日銀は今回、結局利上げに踏み切れないまま大規模緩和の出口が一層遠のく可能性もある。

 ■日米欧の金融引き締めと市場変動

  (利上げ開始時期/その後の展開)

 (1)1970年代前半

  欧州72年10月 米国73年1月 日本73年4月/74年~世界的不況

 (2)70年代後半

  米国77年8月 欧州79年3月 日本79年4月/80年~世界的景気減速

 (3)80年代後半

  米国87年9月 欧州88年7月 日本89年5月/90年~世界的景気減速

 (4)90年代後半

  米国99年6月 欧州99年11月 日本00年8月/01年ITバブル崩壊

 (5)2000年代半ば

  米国04年6月 欧州05年12月 日本06年7月/07年~サブプライム危機とリーマン・ショック

 (6)今回

  米国15年12月 欧州19年? 日本は出口見えず/?

 ※みずほ総合研究所の資料から作成