【高論卓説】いまさら聞けない仮想通貨の問題点 保証ない「子供銀行券」のようなもの
仮想通貨の乱高下が止まらない。これは、バブルともいえる高騰と各国規制当局の発表と規制への警戒感を受けてのものであるが、仮想通貨が持つ本質的な問題がその根底にある。
仮想通貨とは、「ブロックチェーン技術」を応用したインターネット上のお金のようなものである。大きく分けると、ビットコインなど商品として売買されるものと、銀行が決済用に開発中のものがある。問題になっているのは前者であり、前者の場合、発行主体があいまいで、裏付け資産のないものがほとんどなのである。
この部分が国家の保証があり、国民の資産が間接的に裏付けになっている既存の通貨との違いだ。簡単に言ってしまえば、何の保証もない子供銀行券のようなものをみんなが売買しているわけだ。そして、すでにブロックチェーンの基幹技術はほぼ確立済みであるため、システムの導入コストさえ用意できれば誰でも新規参入できるのである。このため、毎日のように新しい仮想通貨が誕生しており、すでにその種類は800を超える状態になっている。ここも大きな問題であり、新たな仮想通貨の乱造により、仮想通貨そのものの信頼低下を招く原因になっている。
基本的に、発行主体のあいまいなタイプの仮想通貨は、通貨の要件とされている『通貨の三機能』(「価値の保存」「価値の交換」「価値の基準」)という3つの機能をそろえていない。まず「価値の保存」では、これだけボラティリティー(資産価格の変動の激しさを表すパラメーター)が高いとなると「保存」能力があると認めることはできない。また、売買の目的が投機であり、円やドルなど通貨に変えることを目的としている時点で保存能力があるとはいえない。
次に「価値の交換」は、仮想通貨を使える場所が非常に限定的で、値動きの大きさからリスクが高く取り扱いをやめる代理店も増えている。また、弱小通貨は、ほとんど使える場所がない。「価値の基準」に関して、これだけ値段が乱高下すれば、基準値を設定すること自体難しい。このように通貨の三機能をそろえていない以上、通貨と呼ぶこと自体が間違いともいえる。だから、日本の当局は「仮想通貨」を商品とみなしているのだ。
また、仮想通貨にはもう一つの大きな問題点が存在する。それは国家など規制当局の監視が難しい点である。インターネットという国境のない世界で利用されているため、一種の「地下銀行」として、国境をまたいだ為替取引に利用できる。例えば自国通貨で仮想通貨を買い、他国の市場でそれを売れば、現地通貨が手に入る。これは資金流出を恐れている国にとって大きな脅威になるのである。
そして、その匿名性から、テロ組織や犯罪に使われている側面もある。実際に、身代金を払わないとコンピューターを破壊するという「ワナクライ」ウイルスの身代金として、ビットコインが使われていた。国家に敵対する以上、規制する動きが出るのも当然の話であり、これから、G7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)などで話し合われる予定である。
【プロフィル】渡辺哲也
わたなべ・てつや 経済評論家。日大法卒。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書は『突き破る日本経済』など多数。48歳。愛知県出身。
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