電子書籍販売、米国で頭打ち 背景にデジタル疲れ、日本は規模拡大

 

 米国で2年以上、電子書籍の販売が減り続けている。背景には2015年に大手出版社が値上げしたことや、タブレット端末を長時間使うことによる「デジタル疲れ」が意識され、紙の本の売り上げが持ち直した事情がある。一方、日本では紙の本の販売減少に歯止めがかかっていない。

 電子書籍の専用端末が米国で登場したのは06年で、ソニーの「リーダー」が先駆けだった。翌07年に米アマゾン・コムが「キンドル」で続いた。

 米出版社協会(AAP)によると、08年の大人向け電子書籍の販売額は6240万ドル(約70億円)だったが、米アップルなどが相次いで参入し、14年には13億7360万ドルに拡大。当時は数年後にも紙の本を隅に追いやるとの見方もあったが、15年に大手出版社が収益確保のために電子書籍の価格を値上げすると、売れ行きが鈍った。

 紙の本は近年、電子書籍に押され、販売額が08年の48億ドル台から14年には35億ドル台に落ち込んだ。だが、15年以降は日本の文庫本に相当するペーパーバックが好調で、16年には38億ドル近くにまで回復した。

 電子書籍を高い頻度で購入するのは「専用端末のユーザー」(出版業界関係者)だが、アプリで電子書籍も読めるタブレット端末が急激に普及、専用端末を使う人が減ったことも響いた。

 「タブレット端末で映画を見たり、ゲームを楽しんだりして、画面を見続けることに疲れを感じる人が多くなった」(同)のも一因という。

 AAPによると、17年1~6月期の電子書籍全体の販売額も前年同期比4.6%減の5億5570万ドルと減少が続く。

 日本の事情は異なる。全国出版協会によると、10年以上売り上げ減が続く紙の書籍や雑誌に対し、電子書籍の販売規模は拡大している。

 米調査会社NPDグループのアナリスト、アリソン・リスブリジャー氏は「価格を見直したり、新たな端末が登場したりすれば、また流れが大きく変わる可能性がある」と分析している。(ニューヨーク 共同)