訪日客、20年までに4000万人 通訳と娯楽の充実に課題
日本を訪れた外国人旅行者数が先月4日、過去最多だった昨年の2404万人を上回った。年間総数は2800万人に達する見通しだ。政府は東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年までに4000万人に増やす目標を掲げるが、通訳ガイドの人材確保や訪日客をもてなす娯楽の充実など課題は山積している。
「観光は文化の交流。社会保障制度からアニメまで日々情報を集めています」
東京・浅草寺などを巡るはとバスツアーでガイドを務めた通訳案内士の山口和加子さんはこう語った。
はとバスは都内各地や鎌倉、富士五湖、日光など訪日客に人気が高い観光名所を訪問するツアーを主催。英語と中国語の通訳案内士約60人と契約している。「日本の歴史や文化に詳しく、語学にも堪能で貴重な人材だ」(広報)。
訪日客を有料でガイドできる国家資格の通訳案内士は現在、全国に約2万3000人いる。だが、英語に偏ったり、人材が都市部に集中したりする問題を抱えている。政府は人材不足を解消しようと、来年1月から無資格ガイドを解禁する一方、国家資格を「全国通訳案内士」に衣替えし、取得者には定期的な研修を義務付けて質の高いサービスを目指す方針だ。
東京五輪開催を見据え、人材確保に期待が高まるが、業界関係者からは「今回の制度変更で、レベルの高いガイドの増加に結び付くかは不透明だ」と懸念も出ている。
ドドン、ドドン-。東京・品川のホールで10月に開かれた「ドラム タオ」の演奏会で、和太鼓の音が響き渡った。「素晴らしかった。来て良かった」。ドイツ・ミュンヘンから訪れたベロニカ・リビエレさん(47)は興奮気味に話した。
開演時間が午後8時半と遅めなのが特徴で、企画したJTBコミュニケーションデザインの細野顕宏社長は「訪日客の夜間の楽しみが少ないという声に応えた」と話す。
訪日客には伝統芸能の歌舞伎や、ミュージカルなどの人気も高い。観光庁幹部は「遅い時間帯の開演を増やしてくれれば効果的だ」と語った。
経済協力開発機構(OECD)によると、外国人観光客の娯楽サービスへの支出割合は、日本は1.1%で、米国の10.4%、フランスの7.8%に大きく水をあけられている。
訪日客向け情報誌「タイムアウト東京」の伏谷博之社長は、英ロンドンが地下鉄の24時間運行を始めたことを挙げ「深夜でも昼間と同じように観劇などの行動をしやすくする考え方が基本にある。国際的な都市間競争が激しくなっており、日本ならではのユニークな体験を発掘すべきだ」と指摘した。
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