安倍晋三首相が未来投資会議で中小企業支援を急ぐよう指示したわけ

 
未来投資会議に臨む経団連の榊原定征会長(右)と中西宏明日立製作所会長=17日午前、首相官邸(斎藤良雄撮影)

 首相が未来投資会議で、「生産性革命」達成へ中小企業支援を中心とした政策パッケージの策定を急ぐよう指示したのは、日本経済の成長力強化に欠かせないからだ。中小企業は日本企業の約99%を占め、生産性の向上がカギを握る。ただ、IT導入を支える人材や若い後継者が不足するなど、課題は山積している。

 「労働時間の削減や働き方改革、経営課題の『見える化』などにつながる」

 日本商工会議所の三村明夫会頭は会議への提出資料でこう述べ、IT導入の重要性を主張した。IT化は、高齢化が進む建設業や人手不足の宿泊業などで有効だとも指摘した。

 ただ、中小企業ではIT導入が進まない事情もある。中小企業庁の委託調査によると、中小企業がIT投資を行わない理由のトップ3は(1)ITを導入できる人材がいない(2)導入の効果を評価できない(3)コストが負担できない-だった。

 三村氏は、中小企業のIT導入を支える「身近な支援機関」設置が必要とも主張。全体の約7割とされる中小の赤字企業にも課税される固定資産税の優遇で負担感を軽くし、設備投資拡大の意欲とリンクさせることも求められる。

 世代交代が進まないことも問題だ。中小企業は平成33年度に30万社以上の経営者が70歳になるが、6割は後継者が未定で、若い経営者による技術革新が進まない。政府が事業承継税制の拡充を検討するのは、世代交代を加速させる狙いがある。

 会議後の記者会見で茂木敏充経済再生担当相は「中小企業は特に地域の雇用の大半を担っている」と強調。「厳しい経営環境でも、投資に挑戦する企業を後押しすることは日本経済再生の重要なポイントだ」と訴えた。中小企業の体力強化に向け、総合的な取り組みが急務となっている。

(山口暢彦)