マイナンバー2年、カード普及率10%に満たず 情報漏洩など懸念
マイナンバー法の施行から5日で2年が経過した。政府はマイナンバーカードと民間ポイントの連携などで制度のメリットを強調するが、申請手続きが煩雑なこともあり、マイナンバーカードの普及率は10%に満たない。政府や自治体などの公的機関で個人情報をやり取りする「情報連携」も、当初1月からの予定が本格運用は11月まで延期された。個人情報漏洩(ろうえい)への不安も根強い中、迅速なサービス拡充と制度の着実な運用の両立が普及には不可欠だ。
1250万枚交付
「たまったマイレージを使って買い物ができたのでお値打ち感もあった。マイナンバーカードを手に入れるきっかけになれば」
野田聖子総務相は2日に総務省内で、マイナンバーカードをポイントカードとして使う実証事業を体験。航空会社のマイレージを自治体ポイントに変換してネット通販で餃子などを購入した後、記者団にこう語った。
マイナンバーカードの交付枚数は、昨年10月3日時点で約850万件だったが1年ほどで約1250万枚に増えた。しかし、野田総務相も「なかなか(普及が)進まない中で考えないといけない」と認めるほど普及は伸び悩む。
政府はマイレージや民間のポイントを合算して使うマイナンバーカードの実証事業や、保育所の入所申請などの手続きができる「マイナポータル」などでカード取得をアピールするのに躍起だ。
2019年にはマイナンバーカードの本人確認機能がスマートフォンで使えるようになる見通しだが、いずれにしてもカード取得は必須。なりすましを防ぐために自治体の窓口に本人が出向く必要があるという煩雑さが取得のハードルになっている。
運用面の課題山積
一方、行政手続で書類提出が不要になるマイナンバー制度の「情報連携」は11月から本格運用を開始する。税と社会保障の手続きで住民票などの書類の提出が不要になるなど、自治体職員や申請者双方のメリットにつながることが期待される。しかし、7月の試行運用後、新しい業務システムの利用を職員が習熟していないことなど運用面の課題も山積しており、総務省は10月中にこうした改善点を整理する考えだ。
情報連携では、年金事務に関する手続きも来年以降、対象になる見通しだ。ただ、年金事務については2年前に情報漏洩が発生したことで延期された経緯がある。情報連携の本格運用で、児童手当や介護保険の申請など940の事務手続で書類提出が不要になる予定だが、連携の幅が広くなるに伴い、漏洩リスクの増大も懸念される。大量の情報の注意深い取り扱いを全国の自治体で徹底できるかは未知数だ。(大坪玲央)
関連記事