受動喫煙防止、悲鳴あげる“弱者” 都の条例指針が波紋、融通きかぬ線引き

 
小規模飲食店などからは、規制の傍らで喫煙所の整備を求める声もある

 2020年東京五輪・パラリンピックに向けた環境整備の一環として東京都が8日まとめた「東京都受動喫煙防止条例(仮称)の考え方」が波紋を広げている。

 都は同日、この考え方に都民の声を反映させるためのパブリックコメントの募集も開始。10月6日に締め切り、今年度内にも都議会に提案して19年に国内で開催されるラグビーワールドカップまでの施行を目指す考えだ。

 30平方メートルで線引き

 都が示した考え方によると、医療施設や小・中・高校、児童福祉施設での敷地内も含めた全面禁煙や大学などの屋内禁煙を明示。ホテルの客室以外、オフィス、駅、飲食店も原則禁煙だが、飲食禁止の喫煙室を設けることは可能としている。また、面積が30平方メートル以下の飲食店は独立した喫煙室の設置が難しいことから、未成年者の立ち入りを禁止すること、かつ従業員を使用しない店または全従業員が喫煙に同意した店を条件に喫煙を可能とした。都では、違反した場合は勧告や命令などを行い、改善されない場合は5万円以下の過料を科すことも考えている。

 これに対して民間事業者、特に小規模の飲食店などから悲鳴が上がっている。

 「例えば基準をわずかに超える31平方メートルの飲食店などは、顧客に喫煙者が多いところは喫煙室を設置しなければならなくなる。しかし、31平方メートルの店でも事実上設置できないことが多く、禁煙にしたら顧客が維持できるかどうかわからない。30平方メートルは10坪にも満たない。ここでの線引きは理解できない」

 “弱者”の救済策は

 東京都飲食業生活衛生同業組合常務理事事務局長の宇津野知之氏は、組合員の問い合わせを前に頭を抱えている。

 宇津野氏によれば、飲食店にもさまざまあるが、禁煙が難しい業態も少なくないという。だが都の考え方は一律で、一部の業態では特定の規模の店舗が大きな打撃を受けることになるかもしれないと危惧している。

 「組合としても、受動喫煙防止に異論はない。しかし、30平方メートルという基準や業態による事情を考慮していない点については熟慮をお願いしたいところだ」(宇津野氏)という。家族で小規模な店舗を経営するケースなど業態によっては大きな変革を迫られることになる。喫煙室の整備のための支援制度も用意されているが、使い勝手がよくないうえ、店の大きさ次第ではそもそも設置できないのが実情だ。

 「日本では海外と違って屋外も禁煙。市中にもう少し多くの喫煙所が整備されない限り、喫煙者を顧客に持つ小規模飲食店は立ち行かない」(同)

 規制でゆれる“弱者”を救済する方策はあるのか。都議会での丁寧な議論、納得のいく基準作りが求められている。