トランプ政権に経済政策の壁 オバマケア改廃、国境税…力不足露呈

就任から半年あまりが過ぎたトランプ米大統領が経済政策で壁に突き当たっている。実現を強く働きかけてきた医療保険制度改革(オバマケア)改廃は28日未明の上院での投票で失敗。支持者から喝采を受けた輸入抑制のための税制や通商政策の見直しでは、国内外で批判される事態を招いた。一方では米国の株式市場は引き続き好調を維持しているという好材料はあるものの、政治の機能不全への深刻な懸念も広がっている。
「オバマケアは自滅させておく」
トランプ氏は28日、ニューヨーク州での演説で上院でのオバマケア改廃の失敗を受け、米国の医療制度のゆがみを放置すると宣言せざるを得なかった。
保険料高騰などの副作用が出ているオバマケアを廃止し、新たな医療保険制度を打ち立てることはトランプ氏の大統領選での看板公約。しかし低所得者への影響が懸念されるオバマケア廃止への抵抗は大きかった。今回の失敗では、議会を説得しきれるだけの明確な新制度を示せないトランプ氏や共和党の力量不足が明らかになった形だ。
またトランプ政権と共和党は27日には輸入抑制策として検討してきた「国境税」の導入見送りを発表。課税による輸入抑制は、トランプ氏が選挙戦で口にした「海外に拠点を移した企業からの輸入品への35%の課税」と似た狙いだが、輸入への依存度が高い米国内の小売業などから強い反発を受けていた。
さらにトランプ氏は中国に対しては鉄鋼の輸入抑制策をちらつかせて過剰生産能力の削減を迫ってきたが、19日の米中包括経済対話は事実上の決裂。8月中旬にも始まるカナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉も、国際社会から「保護主義だ」との批判を浴びる中で難航は必至だ。
ただ、トランプ氏が議会や国内の産業界、貿易相手国からの反発で成果を残せない中でも、米国の株式市場は好調さを維持している。ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は28日、終値としての最高値を3日連続で更新。28日朝に発表された4~6月期の成長率は2.6%増と、堅調さを取り戻した。
しかしトランプ政権下で混迷が深まる米国政治への懸念は根強い。米銀大手JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は今月中旬の記者会見で、「米国は地球上で最も官僚的で、混乱した、もめ事の多い社会の一つに成り下がった」と吐き捨て、税制改革など実のある政策の実現を求めている。(ワシントン 小雲規生)
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