アフリカ 起業する若者続々 不便逆手にビジネス着想
不便な日常に広がる無限のチャンス-。アフリカで近年、起業する若者が増えている。怠慢な役所や未発達のインフラにしびれを切らし、逆手に取る形で新たなビジネスを着想。「国際社会から支援されるだけの時代は終わった」。大国ナイジェリアで国の発展を夢見る若者たちを取材した。
「会社をつくってみようか」。きっかけは雑談だった。ナイジェリアの首都アブジャに住むショーン・オナラジャさん(34)は大学時代の友人、サニー・ムタラさん(31)との会話で、水道管やエアコンの修理工を派遣する事業を思いついた。
それまでは、家具や電化製品が壊れても知り合いのつてで修理工を探すしかなかった。何時間も待った揚げ句、素人同然の修理工が来ることも多い。以前から不満を抱いていた2人は意気投合し、2015年にウィサビを立ち上げた。
同社のウェブサイトから発注すれば、登録された約3000人の中から近所にいる修理工が自動的に選ばれ、現場に来てくれる。社員は共同経営者以外に秘書1人だけ。オナラジャさんはソフトウエア会社に勤めていた時より給料が激減したが、「不便さに困っている人は多く市場規模は大きい。アフリカ各国に事業を広げたい」と意気込む。
アブジャの閑静な住宅街。アート作品が並びカフェが併設された空間に、起業を支援する団体「ベンチャーズ・プラットフォーム(VP)」がある。共有スペースでは起業を目指す若者が活発に意見交換している。
昨年設立されたVPは資金援助をしたり役所の申請手続きを代行したりしている。昨年は7件の支援枠に約400件の応募があった。
同様の団体はナイジェリアのほか、ケニアやウガンダ、コートジボワール、セネガルなどにも広がる。
汚職や腐敗で役所が十分機能せず「若者は自分が動かないと国が変わらないと感じている」(VP幹部)という。
オバソラペ・アビオラさん(30)はVPの支援を受け、ナイジェリアで家庭教師の派遣業を立ち上げた。国の教育予算が少なく親の不満が根強いところにチャンスを見いだした。教師と生徒の相性をコンピューターで照合。生徒が教師を評価し改善につなげている。アビオラさんはアフリカで起業が増え続けると予測する。「国に問題が多いほどベンチャービジネスの未来は明るい」(アブジャ 共同)
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