日本とはこれだけ違う 遅れて当たり前の中国国内線事情
新興国に翔ける□スパイダー・イニシアティブ代表・森辺一樹
私は仕事柄、中国に出張することがよくある。中国出張では1都市にとどまっていることはほとんどなく、中国国内を移動して複数の都市を回るのが通常のパターンだ。今回の中国出張で改めて感じたことを述べたい。
今回の出張は、羽田から北京に入り、北京から広州へ移動した。そして、広州から上海に飛び、また上海から広州に飛んで、広州から羽田に帰ってくるというコースだった。つまり、中国では、北京-広州、広州-上海、上海-広州と国内線に3回乗ったわけだが、3便とも、2時間以上も飛行機が遅れた。
日本の国内線の感覚だと、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)が大幅に遅れるということはめったに起こり得ないので、「飛行機は遅れないものだ」という前提でスケジュールを立てる。
しかし中国では、「飛行機は遅れるものだ」という前提でスケジュールを立てる。
15年前に比べると、これでもかなり改善された方だ。当時は2時間の遅れというレベルではなく、「飛ぶのか、飛ばないのかがいつまでたっても分からない」という状態だった。6~7時間くらい平気で待たされることもよくあった。
私が経験した中で最悪のケースは、機内に乗せられたまま4時間も待たされた後、飛んだはいいが、機体異常とのことで、目的地ではない都市に着陸し、その都市で知らない中国人男性と相部屋で1泊したことだ。
だったら、最初から飛ばないとか、せめて出発地の空港に戻るとか、最悪でも、知らない人との相部屋は避けるとか、そのような配慮がされそうなものだが、文句を言ったら、ただただ、まずい弁当を出されることの繰り返しだった。
それに比べると、2時間の遅延というのはだいぶましになったといえるだろう。このような状況は、中国のビジネスマンにとっては慣れたもので、最初から中国の国内線は遅れると思っている。例えば、明日の午後、別の都市でミーティングがあるとする。当日の午前中に出発すると飛行機の遅延で間に合わないので、ミーティングが重要であれば、必ず前日の夜に出発する。
日本と中国の国内線事情はこれだけ違っている。これは、両国企業の時間厳守に対する考え方の違いだけの問題ではない。日本と中国では国土の広さも、空港の数も、移動する人の数も全く違う。そういう事情もあって、仕方がないことなのかもしれない。15年前を思えばかなり改善されているし、長い目で見ればさらなる改善も見込めるだろう。
このことで私が重要だと感じるのは、時間厳守に対する是非ではなく、「中国の国内線はこんなものだ。2時間遅れで飛べばよい方だ」と受け入れる大きな心だ。
飛行機が遅れることぐらいでいちいち腹を立てていたら中国でビジネスはできない。現地の常識に合わせた「ゆるさ」を持つことが必要なのだ。(毎週火曜日に掲載)
◇
【プロフィル】森辺一樹
もりべ・かずき 海外販路構築のスペシャリスト。15年以上にわたり1000社以上の海外展開の支援実績を持つ。アジア新興国市場の販路構築が専門。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。“アジアで売る”ためのノウハウをネットラジオで無料配信中! www.spyderagent.com/podcast
>>森辺氏のツイッターは @kazukimoribe
関連記事