訪日客の地方誘致、都が後押し 「大阪京都以外にも…」観光ルートづくり本格化

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東京都がインターネット上で紹介している、熊本の観光スポットや交通手段などを紹介するページ

 ■被災地などと連携、ルートづくり本格化

 訪日外国人旅行者の半数以上が訪れる東京から地方に周遊する人を増やすため、東京都が東日本大震災や熊本地震の被災地などと連携し、東京と地方を結ぶ観光ルートをインターネット上で紹介する取り組みを本格化させている。訪日客がまだ少ない地方の経済を活性化させる狙いで、既に17県とのルートを設定。2017年度は九州全域に広げ、さらに全国各地へ順次拡大する方針だ。

 16年の訪日客は過去最高の2403万9000人で、都の集計ではこのうち1310万2000人が東京を訪れた。東京以外は、大阪や京都といった観光資源の豊富な「ゴールデンルート」や北海道、沖縄などに偏っており、その他の地域への誘致が大きな課題だ。

 都は15年度から復興支援として東北6県と、16年度からは被災した熊本・大分両県に加え、訪日客が比較的少ない中国・四国の計9県とそれぞれ連携。ネット上に専用サイトを設け、便利な交通手段や魅力的な観光スポットを紹介している。

 具体的には、海外の空港から東京に入り、各県に移動して周遊する3日間ほどのプランを提案。航空、鉄道各社の協力も得て、路線や移動時間も詳しく説明している。英語や中国語、韓国語などに翻訳し、訪日客の体験談も掲載している。

 例えば福島県への観光ルートは「MIRAI&SAMURAI(未来と侍)」と名付け、1日目は都内で日本科学未来館(江東区)や家電量販店を訪問。2日目は福島県でソースカツ丼を食べ、鶴ケ城(会津若松市)などを巡るプランが紹介されている。福島県によると、訪日客数は回復しつつあるが震災前の水準には戻っていない。県の担当者は「東京に来た客をいかに引っ張るかが重要で、連携はありがたい」と話す。

 政府も訪日客の地方分散を後押しする。15年度から進める「広域観光周遊ルート」事業では、地方の観光名所を結ぶコースを設定し、PR費などを一部支援している。

 東京都は20年に訪日客2500万人、24年には3000万人を目指す。担当者は地方との連携に関して「日本での滞在を増やせば消費拡大につながる。共存共栄を目指したい」と意気込んでいる。