宅配「プライバシー保護伝票」を全国展開 アリババ傘下、個人情報は一部

提供:中国新聞
路上で宅配荷物を仕分けする物流会社の作業員。宅配荷物の送り状から個人情報が流出し、問題が起こるケースも少なからず起こっている=5月、山西省太原市(中国新聞社)

 インターネット通販の個人情報保護が全面的に進化している。中国の電子商取引(EC)最大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング)傘下の物流会社、菜鳥網絡科技は先頃、「西部地域でのテスト実施が終了し、主要宅配会社との協力も実現したことから、個人情報を一部しか印字しない『プライバシー保護伝票』の使用を全国規模で展開する」と発表した。

 ◆流出リスク大幅軽減

 ネット通販の普及に伴い、急成長を続ける中国の宅配産業。「2016年中国宅配発展指数報告」によると、その事業規模は世界トップで、17年の取扱個数は423億個に上る見通し。

 だが、膨大な量の宅配事業には膨大な量の個人情報があり、その送り状の控えから個人情報が流出することに、誰もが頭を痛めていた。

 「中国ネットユーザー権益保護調査報告2016」によると、ネット通販利用者4億8000人の半分超が個人情報の流出に直面し、そのうち84%がそれによるトラブルに巻き込まれたり金銭的被害を受けるなどしている。

 こうしたなか菜鳥網絡は今年4月下旬から5月中旬にかけて、中国郵政集団や傘下の中国郵政速逓物流(国内で「EMS」ブランドを展開)、百世快逓、中通快逓、申通快逓、天天快逓、徳邦物流、圓通速逓、韻達速逓といった主要宅配会社と共同で「プライバシー保護伝票」の運用を開始した。

 「プライバシー保護伝票」では、電子伝票に完全な情報を保有して発送や配達員と顧客の連絡に使用、荷物に貼付される送り状には電話番号の一部を(*で)隠した形で印字される。このため今後、消費者の電話番号が流出するリスクが大幅に軽減。プライバシー保護伝票の利用で顧客が戻ってきたネット通販店舗も少なくないという。

 菜鳥網絡のサービス専門家、李洪雨氏は「個人情報保護は、菜鳥の電子伝票とクラウド印刷技術がなければ実現しない。このサービスを導入したいネット通販店舗は、菜鳥のクラウドプリントモジュールのインストールが必要。従来の送り状印刷より速くて高効率だ」と説明している。

 ◆物流安全化を徹底

 物流の発展に伴い、物流企業を対象とした法律がより整備され、顧客情報の保護についても明確に規定されている。例えば「宅配市場管理弁法」では、「宅配事業を運営する企業とその従業員は、宅配サービスに携わる中で知り得た顧客情報を違法に提供してはいけない」としている。

 ただ、現在の「プライバシー保護伝票」は電話番号を隠しただけのもので、(住所など)個人情報の全面的な保護には至っていない。これについて菜鳥網絡関係者は「われわれと他の宅配会社がさらなる協力を進め、スマート端末の配置を増やし、宅配スタッフの研修を拡大していく必要がある」と説明する。

 菜鳥網絡の王文彬最高技術責任者(CTO)は「プライバシー保護伝票は始まったばかりで、これは徐々に(業務運営を)情報化していくプロセスの一つだ。宅配会社は1日1億個近い荷物を扱っており、その処理方法は各社さまざま。運営ルールや作業手順などを変更するにはプロセスがある」と説明。

 その上で「他の宅配会社との協力で、将来的には従来型の送り状は全て廃止し、オフラインでの個人情報保護を徹底していく」との考えを示す。だが今月初めには一時、順豊速運との間で荷物情報データ共有が停止する事案が発生。世論は「物流データに対する双方の影響力争いだ」とみている。(中国新聞社)