日本頼みの韓国航空会社で相次ぐトラブル 新規就航・増便も“安全確認”は二の次?

 
羽田空港のC滑走路で左翼エンジンから出火するトラブルがあった大韓航空機=昨年5月27日午後(本社チャーターヘリから、大山実撮影)

 「本当に大丈夫なのか」と心配してしまった。韓国の航空会社のことだ。6月に入って、福岡空港に着陸前の大韓航空機の操縦室内から煙が出たり、アシアナ機が韓国国内線で部品が取れたままの状態で飛んだりと、大惨事になりかねないトラブルが続いた。米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に対する中国の報復で訪韓中国人客が激減する中、韓国エアラインの日本人客取り込みに向けた新規就航や増便が相次ぐ。その一方で、安全面への懸念がぬぐいきれない。韓国機は2月にも一日に3件ものトラブルを起こしている。日本人を呼び込むのは、“安全確認”したあとにしてもらいたい。

 「操縦室内に煙」「部品取れたまま運航」…

 6月に入って以降、韓国の旅客機のトラブルが続いている。

 9日午前10時20分ごろ、釜山発福岡行きの大韓航空783便ボーイング737(乗客乗員162人)から「操縦室内に煙が出ている」との連絡が、福岡空港の管制官にあった。国土交通省福岡空港事務所によると、間もなく同空港に着陸し、火災は発生せず、けが人もなかった。

 同機は福岡空港から北約13キロの上空で煙が発生。数分後に着陸し駐機場まで自走した。空港事務所は点検のため滑走路を約8分間閉鎖。少なくとも出発と到着の計19便に最大で39分の遅れが出た。大韓航空によると、事前の点検で異常はなかったという。

 一方、12日の韓国紙、中央日報(日本語電子版)は同じく韓国紙の朝鮮日報を引用し、10日午後に済州から麗水に向かっていたアシアナ航空8198便エアバス320(乗客乗員159人)から、エンジン騒音を低減する装置を覆う部品が取れて落下したと報じた。部品が取れた状態で運航していたということになる。

 報道によれば済州空港サイドは同日午後3時20分ごろ、空港誘導路(駐機場から滑走路で向かう道)に部品が落ちているところを確認し、アシアナ航空を含めた全社に確認するよう伝えた。だが、アシアナ機は麗水に到着した後も部品が取れていた事実を確認しておらず、同日午後3時50分には再び乗客を乗せて済州に戻っていたという。 

 そうした事実自体も深刻だが、アシアナ側の当事者意識の希薄さはさらに深刻なのではないか。同社は朝鮮日報に対し「該当の部品は落ちても警告などが入るような部品ではなく、小さな部品だったため目で確認しにくいところがあった」と説明。まるで他人事のような回答にあきれてしまう。

 日本路線拡大のためには何でもあり?

 一方で、米軍によるTHAADの韓国配備に対する中国の報復で訪韓中国人客が激減する中、韓国エアラインの日本人客取り込みに向けた新規就航や増便が相次いでいる。

 聯合ニュース(日本語電子版)によると、韓国格安航空会社(LCC)のエアプサンが6月8日、大邱-東京(成田)線を新規就航した。同路線は午前8時40分に大邱を出発し、午前10時40分に成田に到着するスケジュールで毎日1往復運航する。搭乗客には機内食が無料提供され、受託手荷物は20キロまで無料という。

 さらにエアプサンは大邱-札幌線を週3往復から週5往復に、大邱-大阪線を毎日1往復から2往復に増便。新規就航と増便で、エアプサンの大邱発日本行きの航空便は週17往復から33往復に増えることになる。

 同じくLCCのティーウェイ航空は、済州-大阪線を6月30日から毎日、釜山-大阪線を7月1日から週4往運航する。このうち済州-大阪線は、THAAD配備に対する報復措置として中国が自国の旅行会社に韓国旅行商品の取り扱いを中止するよう指示したことから、中国の航空会社が返納した済州空港の発着枠を利用するという。

 一方、ソウル市と韓国LCCのエアソウルは4月、観光客誘致に向け業務協約を結んでいる。聯合ニュースによると、同社が就航している長崎や高松、鳥取・米子、富山、山口・宇部など日本の中小都市を対象に共同でマーケティングを展開し、ソウルに観光客を呼び込むのが目的だという。

 こうした動きには、韓国国土交通部が韓中路線の利用客が激減していることを受け、日本や東南アジアを中心に路線を多角化する戦略を立てていることも背景にある。

 日本人にとっての2つのイメージ

 日本人にとって、韓国のエアラインは身近な存在である。特に多くの韓国機が乗り入れている仁(イン)川(チョン)国際空港は乗り継ぎなどで国際的評価も高く、仁川経由で欧米などに向かう日本人も多い。アジアの“ハブ空港”として機能しているのである。

 その一方で、韓国のエアラインは日本国内で多くのトラブルを起こしているというイメージもある。6月9日に福岡空港に着陸前の大韓航空機の操縦室内から煙が出たことは記憶に新しい。それだけではない。昨年5月には、東京・羽田空港を離陸しようとした大韓航空機から出火し、乗客乗員319人全員が緊急脱出する事故が起きた。また、一昨年4月にはアシアナ機が広島空港で着陸失敗事故を起こしている。

 近年、日本の国内外を問わず、事故や不祥事が相次いでおり、韓国の航空会社は「安全第一」にはほど遠い。THAAD禍の被害者を装い、日本人を呼び込むために新規就航や増便を目論むのはいいが、“安全確認”したあとにしてもらいたい。