(下)若者は「買わない」のか「買えない」のか? 欲しいのに買うのをやめてしまう理由
ライフデザイン□第一生命経済研究所 主席研究員・宮木由貴子
若者が商品・サービスの選択肢と付随する情報の多さに、買う・買わないの基準を見いだせずに「何を買ったらいいのかわからない」という状況に陥っている可能性を、前回指摘した。
人は選択肢が多すぎると決定を回避し、現状を維持する傾向がある。提供側は消費者にとって選択肢が多いことは好ましいと考えがちだ。個人のライフスタイルや志向が多様化した現代では、多くの選択肢は、多様な消費者にきめ細かく対応するという点で間違っていない。
しかし、第一生命経済研究所の「若者の価値観と消費行動に関する調査」によれば「(買いたいと思って調べたり)選んでいるうちに、面倒になって買うのをやめてしまう」とする割合は、若者を中心に比較的高い割合を占める。若者の「欲しい」気持ちは、多くの商品・サービスと付随する情報に接するうちに、何が欲しいのかわからなくなり「買うのをやめる」ケースが実はかなりあるようだ。
確かに、ちょっとした家電を買う場合、商品の種類や機能をネット検索▽自分の欲しい機能を持つ商品を希望価格帯から絞り込む▽クチコミサイトなどでユーザーの評価を閲覧▽家族や知り合いの意見収集▽店頭で実物を見て店員にヒアリング▽商品を決め店頭特典や価格比較サイトを参照▽安さやサポートなどのアフターケアの充実性などを鑑みて発注・購入-というプロセスを踏む人は少なくない。
だが、この状況を果たして「買い物が便利」といえるだろうか。この過程で「そもそも自分はなぜこの商品が欲しかったんだっけ」という疑問にぶつかり、面倒臭さのあまりに「もう少ししたらもっといいのが出るかも」「急がないから様子を見るか」といった結論に達する人は少なくないのだ。
実際若者を中心に、選ぶのが難しいモノを購入・契約するとき、多くの情報から自分に必要な情報だけをまとめてもらえるアドバイザーがいたらいいと考える人が多いことが調査結果からも明らかとなっている。
「買えない」理由は、懐事情だけではない。
▼【ライフデザイン】(上)彼らは「買わない」のか「買えない」のか? 若者が消費に消極的なワケ
関連記事