上海機構が初の「拡大」 インド、パキスタンが正式加盟へ

 
(左から)中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領=8日、カザフスタンのアスタナ(AP)

 【モスクワ=遠藤良介】ロシアと中国、中央アジア4カ国で構成する上海協力機構(SCO)の首脳会合が8日、カザフスタンの首都アスタナで開幕。2日間の日程では、準加盟国のインドとパキスタンの正式加盟が承認され、SCOが初の「拡大」を果たす見通しだ。正式加盟の受け入れは、SCOの存在感向上を狙うロシアが主導。しかし、対立し合うインドとパキスタンの加盟は、同機構の効率や方向性を不透明にするとみられている。

 首脳会合に先立ち、プーチン露大統領と中国の習近平国家主席が会談し「連携強化を確認した。インドとパキスタンは2015年に正式加盟を申請。SCO内部の機能強化を優先する立場から中国が受け入れに消極的で、手続きに時間を要した。SCOは、加盟8カ国で世界の人口の43%、国内総生産(GDP)の24%を包含する機構となる。

 ロシアのウシャコフ大統領補佐官は、インドとパキスタンの加盟で「機構の国際的権威が高まる」とし、イランの正式加盟も認めるべきだと述べた。ロシアは、SCO内で中国が台頭するのを抑止する思惑からも「拡大」に積極的だ。

 ただ、インドとパキスタンの加盟は、「対テロ」や「反分離主義」での連携を柱とするSCOの機能を大きく弱体化しかねない。

 カシミール地方の領有権などで対立するインドとパキスタンが、「テロリスト情報の交換」に応じる可能性は低い。印中間では米国との距離をめぐって温度差が大きく、「全会一致」を原則とするSCOの運営には困難が予想される。

 SCOは1990年代、中国と旧ソ連諸国の国境画定や安全保障を協議した「上海ファイブ」が母体。SCOはテロへの共同対処や経済協力に軸足を移し合同軍事演習も行ってきた。

 露紙によると、9日の首脳会合では「核拡散防止条約(NPT)の順守」や、中国の経済圏構想「一帯一路」の支持を盛り込んだ「アスタナ宣言」が採択される見通し。インドとパキスタンが投票権を得る来年以降、こうした問題での合意形成も難航が必至だ。