未来投資会議 新たな成長戦略素案 「ソサエティー5.0」早期実現図る

 
未来投資会議に臨む(左から)石原伸晃経済再生担当相、安倍晋三首相、麻生太郎財務相=30日午後、首相官邸

 政府が30日まとめた新たな成長戦略の素案は、人工知能(AI)などを中心とする「第4次産業革命」が普及した社会「ソサエティー5.0」の早期実現を打ち出した。重点分野として、自動運転やドローンの技術を活用した「移動革命の実現」や金融とITを融合した「フィンテック」を挙げ、生産性向上と成長加速を後押しする施策を盛り込んだ。両分野のポイントをまとめた。

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 ■来年から「隊列走行」実験

 成長戦略では、自動運転技術やドローンを活用したサービスの実用化を後押しする「移動革命の実現」を掲げた。過疎地域での移動手段や人手不足といった成長の足かせとなる社会的課題の解決に加え、国際的に激しさを増す自動運転の開発競争で、日本が優位に立つ狙いもある。

 具体策として挙げられたのは、高速道路で先頭のトラックだけをドライバーが運転し、無人の後続車が自動運転で追走する「隊列走行」だ。2018年1月からまず全車両にドライバーが乗った状態で実証実験を行い、翌年1月から先頭車両以外は無人に切り替える実験も始める。

 実証実験では悪天候や故障時でも安全を確保できるかなどの技術的な課題について検証する予定。22年度以降に東京-大阪間での事業化を目指している。

 また公共交通機関が不十分な過疎地域で、高齢者や子供が買い物や通院に使うための移動手段として自動運転車を活用するサービスを支援する。拠点となる「道の駅」などに管制センターを設け、自動運転の小型バスなどを走らせる。今夏から全国10カ所で実証実験を行い、今年度末に検証結果をまとめる。

 ■80銀行システム、3年以内に外部接続へ

 ITと金融を融合した新サービス「フィンテック」も成長戦略の柱に盛り込まれた。決済や送金、融資、資産管理といった金融機関の“聖域”をITベンチャーが活用し、使い勝手のいいサービスが生まれれば、利便性や企業の生産性向上につながると期待されているからだ。

 政府は3年以内に、約80行がそれぞれ公開する銀行システムに外部接続できる「オープンAPI」の導入を目指す。サービス利用者が月の家計簿を自動作成できたり、留学中の子供への仕送り手数料が抑えられたりすることなどを想定している。企業には、売掛金や税務書類の作成の解消、資金不足をあらかじめ回避できるといった活用を見込む。5年以内をめどに、フィンテックを活用して財務、会計領域などのバックオフィス業務を効率化する中小企業の割合を現状から4割程度まで高めたい考え。

 このほか、フィンテック分野は世界的に競争が激化しており、主導権を握るためにも、国際会議やITベンチャーの海外展開などを積極的に支援していく計画。監督対応などが不十分とされ、進まないケースもある実証実験がスムーズにできる措置も講じる。