国防・外交政策の立て直しを 幸福実現党党首・釈量子
太陽の昇る国へ--韓国で文在寅新政権が発足しました。北朝鮮問題への影響についてはどう考えますか
文氏はかねて「反日」姿勢を鮮明にするほか、対北朝鮮をめぐっては、選挙中、開城工業団地の操業再開や金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談に意欲を示すなど、対話重視、融和的な考え方を表明してきました。これは北朝鮮の増長を招くおそれが強く、日本として文政権の動向には大きな注意を払わなければならないと思います。
--文氏の大統領就任も受けてか、14日には、北朝鮮が新型弾道ミサイルを発射しました。米本土への核攻撃能力獲得も近づいているとみられます
ミサイルの高度が2000キロ超に達したことから、関係国が危機感を募らせていますが、北朝鮮の軍事技術の向上は明らかです。21日にも新型の中距離ミサイルを発射しており、日本として国土全域にわたるミサイル防衛の再構築も必要だと思います。
そもそも北朝鮮の核ミサイル問題が、対話による外交的手段によって解決に向かうとは思えません。かつての6カ国協議がなんら実効性を伴わず、北朝鮮に合意を反故(ほご)にされた揚げ句、核開発の猶予を与えてしまったことでも明らかでしょう。文氏の姿勢では、北朝鮮の脅威をますます高めるだけであると指摘しておきます。
--大統領選において、文氏は慰安婦問題をめぐって、「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意について再交渉する考えを表明していました
慰安婦問題は歴史の捏造(ねつぞう)であり、事実無根の反日宣伝にほかならないというのが、私たち幸福実現党の見解です。日本政府には、歴史認識をめぐるわが国の名誉回復に向けて、韓国側の言いがかりに断じて譲歩することなどないよう強く求めます。
--今後、日米韓連携の足並みが乱れるとの指摘もあります
日米韓は連携を強めることで、北朝鮮に圧力をかけてきましたが、文氏が金大中政権や、かつて自身が仕えた盧武鉉政権時の「太陽政策」に回帰するならば、この枠組みには期待できないでしょう。北朝鮮としては韓国新政権を与(くみ)しやすしとみるでしょうし、また、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備に反対してきた中国が韓国に揺さぶりをかけてくることも予想されます。日本として、こうした状況を冷静に見つめ、対北朝鮮圧力を強めるべく、有効な一手を打つべきだと思います。北の脅威除去に向けて、トランプ米政権が軍事行動も排除しない姿勢を示していることを支持するとともに、ロシアとの関係強化をはじめ、戦略的な外交努力を展開すべきです。
米国による攻撃の可能性も踏まえ、金正恩氏には核・ミサイル開発を放棄するよう心より願います。武装解除こそが、北朝鮮の人民を救うための、指導者としての正しい判断だと思います。
さて、「反日」大統領の誕生で、他にも日本として考えておかないといけないのは、今後、南北統一により朝鮮半島に“反日核武装国家”が成立する可能性がないとはいえないということです。民族主義的な愛国心に基づいた、ファシズム的傾向の強い統一朝鮮が誕生すれば、わが国の安全保障を大きく脅かすことになることは間違いありません。いずれにせよ、今後、日本や地域の平和・安全が危機に直面することが考えられるだけに、抑止力の強化を急がねばならないと思います。
--防衛にも関することですが、安倍晋三首相は憲法9条に自衛隊を明記する憲法改正案を表明しています
安倍首相としては、いわゆる改憲勢力が衆参両院で3分の2以上を占めるなか、9条改正を実現するための現実的な案を示したつもりなのだと思います。しかし、この憲法改正により、「自衛隊は違憲である」とする批判を一蹴することに成功したとしても、防衛力の強化に寄与しないことは明らかです。
誇りある主権国家として、国民の生命・安全や平和な暮らしを守り抜ける体制を構築すべきです。「戦力不保持」「交戦権の否認」を定めた9条2項を見直し、自衛隊を「軍」と位置づけるなど、わが党としては、9条全面改正の必要性を堂々と提起していく考えです。国際情勢の先行きに不透明感が強まるなか、実効性ある国防・外交政策の策定・実施が必要だと確信します。
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【プロフィル】釈量子
しゃく・りょうこ 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。大手家庭紙メーカー勤務を経て、94年、宗教法人幸福の科学に入局。常務理事などを歴任。幸福実現党に入党後、女性局長などを経て、2013年7月より現職。
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