Jアラートの「実力」、効果どこまで? 命守る迅速避難…認知度不足懸念も

 

 北朝鮮によるミサイルの脅威が現実化した際には住民への早期伝達、迅速な避難が命を守る鍵となる。政府はこれまで全国瞬時警報システム(Jアラート)の整備を進め、3月には同システムを使って初の避難訓練も行うなど備えを強化してきた。ただ、その「実力」は未知数だ。

 《先ほど、ミサイルが発射された模様です》

 3月、秋田県男鹿市で、同県沖20キロの領海内にミサイルが着弾する想定で避難訓練が行われた。発射3分後には住民に緊急メールが届き、屋外スピーカーからサイレンが鳴り響いた。市の担当者は「自然災害とは違う音のサイレンが鳴ることや、実際に伝えられる情報の内容などが分かった」と訓練の効果を強調する。

 ミサイル発射を確認し、防衛省の情報をもとに政府が「日本に飛来する可能性がある」と判断した場合は、総務省消防庁を通じてJアラートで発射情報を発信。領土や領海に落下する可能性があれば屋内避難が呼びかけられ、落下場所の情報が伝えられる。

 伝達手段は防災行政無線によるアナウンスのほか、ケーブルテレビやコミュニティーFM、スマートフォンや携帯電話のエリアメール・緊急速報メールなどもある。

 災害情報の発信は、緊急地震速報などで実績を重ねているものの、武力攻撃情報での運用は計算できない部分も多い。

 政府によると、平成28年2月に北朝鮮がミサイルを発射した際は、約4分後に情報を発信。その約7分後に沖縄県先島諸島上空を通過した。この事例から、政府は着弾より早く発射情報や屋内避難の呼びかけを住民に伝えられるとみる。ただ、北朝鮮がその後、発射を探知しにくい固体燃料エンジンを導入した可能性も指摘されており、政府担当者は「第1報から着弾までの時間が短くなる可能性はある」と話す。

 政府担当者は、パレスチナ問題を抱えるイスラエルでは「最初のサイレンが鳴った時点で住民が避難を始める」とした上で、「住民の理解が進むことが一番。認知度を上げる必要がある」と訴える。

 一方、日本大危機管理学部の福田充教授は「時間をかけて国民を教育しなければならないのに、政府の対応は後手に回っている」と指摘。「Jアラートが必ず機能するとは想定しない方がいい。政府は発射の可能性があると分かった時点で住民に行動を取るよう伝えるべきだ」としている。

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【用語解説】全国瞬時警報システム(Jアラート)

 人工衛星や地上回線を通じて、国から地方自治体に緊急情報を伝える仕組み。弾道ミサイルをはじめとする武力攻撃のほか、大規模テロ、緊急地震速報、津波警報などの情報が対象で、発信して1~2秒で自治体に、十数秒から数十秒で住民に伝達できる。