中国の消費スタイル変化で「戦国時代」の様相 イオンが出店拡大、ネット通販の逆風も
高い成長が続く個人消費を狙った競争が中国で激化している。都市部で拡大する中間層を取り込むため、日本の流通大手イオンは大型ショッピングモールの出店を拡大。一方でアリババグループに代表されるインターネット通販も急拡大し、海外の流通大手のスーパーや百貨店の店舗閉鎖も目立つ。中国人の消費スタイルの変化もあり「戦国時代」の様相を呈している。(北京 三塚聖平)
「遊び場が多くて孫も喜ぶからよく来ているわよ」
北京市中心部から車で約40分。河北省三河市の「イオンモール河北燕郊」を、近くに住む女性(80)が孫を連れてきていた。延べ床面積約22万平方メートル、複合映画館(シネコン)など約200の専門店が入る店内では、多くの家族連れが買い物や食事を楽しんでいた。
同店は昨年11月にオープン。中国当局は北京の人口集中緩和を目的に郊外開発を進めており、店舗周辺は北京に通勤する中間層が多く住むベッドタウンとしてマンション建設も盛んだ。イオンモールは「経済成長に若干の鈍化はみえるが、中間所得者層の裾野はどんどん拡大している」(現地法人幹部)とし、17年度以降も年間4店舗程度のペースで出店する計画だ。
中国政府は従来の輸出・投資主導の経済構造から、内需型への構造転換を急ぐ。李克強首相も先月の全国人民代表大会で「消費の安定した伸びを促す」と強調した。拡大する中間層の需要をどう引き出すかが中国経済の将来を握る鍵だ。
ただ、中国ではネット通販が急拡大し、流通大手の実店舗に迫る。日本総合研究所によると、中国ネット通販市場は2015年に世界最大の約3・9兆元(約63兆円)と米国の約2倍の規模。日本貿易振興機構(ジェトロ)の箱崎大・中国北アジア課長は「店舗には商品を見に行くだけで、実際に買うのはネット通販という消費者も増えている」と指摘する。
昨年にはイトーヨーカドーが北京市内の3店舗を閉鎖した。同社は「五輪後、北京の商環境は厳しい」とみて、新規出店は内陸部の成都で進める考えだ。
米ウォルマート・ストアーズも店舗閉鎖を進行中と中国メディアが伝える。中国の商業専門サイトは「ウォルマートはネットに敏感でなかった」と逆風の理由を分析。前出のイオンモール現地法人幹部も「消費者の価値観の変化を敏感に捉えていくことが欠かせない」との考えを強調する。
関連記事