昨年のエンゲル係数は25.8%に上昇 29年ぶり高水準 食生活の変化影響

 
エンゲル係数の推移

 消費支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」が2016年は25.8%に上昇し、29年ぶりの高水準となった。野菜の値上がりが家計を圧迫した面が大きいものの、総菜などの「中食」や外食を楽しむ層が増えたことも一役買った。「係数上昇イコール生活困窮」と、かつてのように一概には言い切れない、近年のライフスタイルの変化が浮かび上がる。

 食費は日々欠かせず、他の支出に比べ節約しにくい。このためエンゲル係数は収入が少ない世帯で高く、趣味やレジャーにお金を回す余裕が出ると低くなる傾向がある。

 総務省の家計調査によると、2人以上の世帯のエンゲル係数は戦後、1990年代半ばまでほぼ一貫して下がり続け、その後は20%台前半で推移してきた。

 ところが近年急上昇し14年の24.0%から15年に25.0%、16年はさらに上がり87年(26.1%)以来の高水準を記録した。

 16年は天候不順で野菜の価格が高騰、一時に比べると円安傾向で輸入食品も値上がりした。消費者物価指数の内訳を見ると「食料」は前年比1.7%上昇し、手取り収入が伸び悩む中で家計に重くのしかかった。

 他方、食生活の変化もエンゲル係数を押し上げた。調理食品への支出は5.3%増え、食費全体の伸び(1.5%増)を大きく上回った。共働きやお年寄りの世帯が増え、手間が掛からない総菜や弁当をコンビニエンスストアなどで買い求める人が増えているためだ。調理食品は食材より値段が高く、購入が広がればエンゲル係数の上昇要因となる。

 洋服などへの支出を抑える一方、買い物より体験を重視する「コト消費」が人気を集め、外食費が削られにくくなっているとの指摘もある。

 第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「食文化が成熟し、エンゲル係数の上昇がそのまま生活の困窮を示すわけではなくなった。生活水準を測るにはコメや小麦粉など必需品の支出の推移を見る必要がある」と指摘している。