韓国で日本の修学旅行生向け「歴史教科書ツアー」企画へ 外国人客誘致になりふり構わず?

韓国中西部の忠清南道(チュンチョンナムド)が、日本の中学・高校の歴史教科書に古代朝鮮半島南西部にあった国家「百済」の歴史に関する記述が多数あることを背景に、修学旅行生誘致に向けたカスタマイズ型旅行商品の開発に乗り出した。「歴史ツアー」で日本からの観光客を確保するという戦略のようだ。ただ、日韓間には歴史認識や慰安婦などの問題が横たわる。米軍による高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備決定で中国人客の目減りが懸念される中、韓国の外国人観光客の取り込み策は果敢であり、強引でもある。まさかとは思うが、韓国が歪曲した「歴史ツアー」も視野に入れるのかと勘ぐってしまう。
教科書に「百済史」の記述多いことをいいことに
韓国紙、中央日報(日本語電子版)は2月20日、忠清南道が日本の修学旅行団の誘致のためのカスタマイズ型旅行商品の開発に乗り出し始めたと報じた。日本の中学・高校の歴史教科書に「百済」の歴史に関する記述が多数あることから、「歴史ツアー」で日本からの観光客を誘致する狙いがあるようだ。
忠清南道によれば、2015年に百済歴史遺跡区がユネスコの世界文化遺産に登録されて以降、百済の古都の公州(コンジュ)や扶余(プヨ)を訪れる日本人観光客が増加しているという。今年は4万人余りが訪れるものと予想される。
中央日報によると、忠清南道はこうした傾向も踏まえ、今年、歴史教科書に絡むツアー商品2~3つを開発する計画という。新しく開発する旅行商品は「百済夜!」という名前で日本の学校向けに紹介されるようだ。こうした歴史ツアーは中・高校生だけでなく、過去に公州や扶余に修学旅行を来た中高年層の思い出を刺激し、リピーターも期待できるというのが忠清南道の判断らしい。
先が見通せなくなった日本人客の動向
韓国はこのところ、外国人観光客の誘致をめぐって神経質になっている。そのきっかけは、米軍によるTHAADの韓国配備決定によって、中国が「報復」として国民の訪韓を制限したとされることだろう。韓国政府は中国人客の抜けた穴を埋めるため、韓国ドラマなど韓流の拡散を背景に、タイやベトナムといった東南アジア諸国に触手を伸ばし、さらには中東の「イスラム教徒」もターゲットに据えたようだ。朝鮮日報など複数の韓国メディアが報じている。
こうした中、韓国としては、日本からも多くの観光客を呼び込みたいにちがいない。聯合ニュース(日本語電子版)によると、今年1月の訪韓日本人客は前年同月に比べ約14%増加し、ひとまずは善戦したといえる。
しかし、実際には朴槿恵(パク・クネ)大統領の失脚で今後が見通せなくなった。昨年1年間の日本人客数こそ、2015年12月の慰安婦問題をめぐる日韓合意がはずみとなり4年ぶりに前年を上回ったが、次期大統領選は候補者同士による反日合戦になる可能性が高く、新政権下で慰安婦問題をめぐる日韓合意が反故(ほご)になるという観測すらある。そんな状況で、多くの日本人が喜んで韓国を訪れるだろうか。
また、聯合ニュースの指摘では、近ごろ円が対ウォンで下落しているため「韓日間で相手国からの観光客数の差がさらに広がる可能性が高くなっている」という。つまり、ウォン高・円安が進行すると韓国から日本への旅行費用は安くなる一方、日本から韓国への旅行費用は高くなる。結果、訪日韓国人客が増え、訪韓日本人客が減るという現象が起こることになる。
歪曲「歴史ツアー」だけはやめて!
そこで、韓国の一地方自治体である忠清南道が打開策としてぶち上げたのが、「歴史ツアー」商品の開発だった。
中央日報によると、修学旅行に加え、日本人個人客の誘致のためにパッケージや自由旅行を結合した旅行商品も開発するという。今年9月には、日本で開催される「ツーリズムEXPOジャパン2017」に参加し、忠清南道の隠された観光地をPRし、ハングルを学んでいる30~40代の日本人女性を対象に広報も強化するようだ。
忠清南道は同紙の取材に「歴史ツアーは過去に忠清南道を訪問した親世代の思い出を蘇らせ、彼らの子供が訪れるきっかけになるだろう」とし、「15市・郡と修学旅行の誘致活動に共同で行っていく」と答えている。
日本の中高生が修学旅行を通じ古代の朝鮮半島について学び、日韓両国の関係史を知ることは有意義なことだと思う。ただし「そこにとどまっている限りは」である。だが、近現代をめぐり両国の歴史認識に大きな隔たりがあるのは周知である。まさかだと思うが、韓国が歪曲した「歴史ツアー」を視野に入れているのかと勘ぐってしまう。
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