「クール便」国際標準化を加速 官民一体で“日の丸物流”の海外展開後押し

 
アジアを中心に国内物流事業者の海外進出が加速している(ヤマトホールディングス提供)

 クール宅配便など日本国内の高品質な物流システムの海外展開を後押しするため、政府が国際標準化の取り組みを加速させる。当面は日本主導で国際機関が発行した国際規格「PAS1018」をアジア各国に浸透させる。“日の丸物流”の競争優位性を官民一体で対外発信し、インターネット通信販売の普及などで急成長する海外の物流ニーズを取り込む狙い。

 PAS1018はヤマトホールディングス(HD)をはじめとする国内の主要物流各社の参画で英国規格協会(BSI)が発行した。保冷車両を用いた配送サービスについて、物流倉庫や保冷車における温度管理や、配送中の積み替え作業の基準、人材育成や配送サービスの点検・改善などの項目を満たしたクールサービスだけがPAS規格の認証を受けられる。

 「公開仕様書」と呼ばれるPAS規格は各国政府や業界団体の採用により業界標準となるほか、比較的短期間で策定できる利点がある。今後は国内物流各社がPAS規格の認証取得に向けて準備を進める一方、日本政府が日・ASEAN(東南アジア諸国連合)などの国際会合や政府間対話などの機会を活用し、PAS規格の認知拡大に向けた戦略を具体化させるなど、“オール・ジャパン”の普及体制を整える。

 ドライバーの労働環境悪化も背景に、宅配便最大手のヤマト運輸が荷受量抑制の検討に乗り出すなど、国内物流をとりまく状況は不透明感が強まる。一方で海外市場はアジアを中心に中間層の所得向上とインターネット通信販売の普及で、大幅な需要拡大が見込まれる。クール便などの付加価値化も進むとみられ、日本の物流各社は海外展開を積極的に進める。

 だが、アジアの新興国では「箱に氷を詰めただけ」(政府関係者)といった劣悪なサービスでもクール便として市民権を得ているのが実情だ。日系事業者が競争優位を発揮するには武器となる品質の高さを「見える化」する必要があった。政府は物流システムの国際標準化を進めることで、国際市場における主導権を握りたい考え。