トランプ米大統領の政策 市場に広がる不安 株売り先行
トランプ米大統領の政策手腕に対する不安が金融市場で広がっている。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱などの政策が、世界経済の成長を停滞させるとの不安感から24日の外国為替市場の円相場は一時1ドル=112円台に上昇し、東京株式市場は売りが先行。日経平均株価の終値は、前日比103円04銭安の1万8787円99銭だった。金融や財政、外交面でも極端な政策転換が危ぶまれており、情勢次第で市場の混乱を招く恐れがありそうだ。
明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「強硬な保護主義の政策を推し進めるなら、世界経済への打撃は計り知れない」と警告する。トランプ氏は就任演説で「米国製品を買おう」と呼び掛けた。だが外国製品の排除を狙って高関税などを課せば、貿易が縮小して世界景気が停滞し、米国内では物価上昇を招いて「消費者の懐を直撃する」と懸念する。
トランプ氏の唱える金融規制の緩和が実現すると「銀行の業績には当面プラスに働く」と想定するのはSMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト。ただ、バブルがはじけて世界経済が危機に陥った2008年のリーマン・ショックを教訓とした現行規制を過度に緩めれば、危機の芽となるバブルの再来を招きかねない。トランプ氏は米製造業への重荷となるドル高を牽制(けんせい)する姿勢をにじませる。岩下氏は「長期金利を低く抑える日銀の金融政策は円安誘導だとしてトランプ氏が攻撃しないか心配だ」と語る。
トランプ氏は大幅減税も掲げるが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の三浦誠一投資ストラテジストは、財政悪化懸念から「金利上昇を招き、米国の景況感悪化につながる可能性がある」と指摘。米政権への期待先行で上昇してきた日経平均株価は反動で下落すると予想するが日銀が上場投資信託(ETF)購入で支えるため、1万8000円前後で下げ止まるとみている。
SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは、就任前のトランプ氏が中国からの反発を顧みずに台湾総統との電話会談に踏み切るなど「外交政策は素人で、歴史的な経緯を踏まえていない行動がみられる」と手厳しい。安全保障戦略上の不手際から「不測の事態が起きる恐れもあり、市場の警戒は高まりやすい」と強調していた。
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