ふるさと納税、サイト利用急増 寄付額最高へ 自治体、新たな悩みも

 
ふるさと納税サイト事業者は、サイト上の返礼品受け付けだけでなく、特産品をPRするイベントを開催するなど地方振興に力を入れている=14日、東京都台東区

 寄付金のクレジット決済や返礼品選びが簡単にできるふるさと納税制度のポータルサイトの利用者が急増している。2016年末時点の納税額はサイトによっては前年比で4倍を超えたところも出ている。総務省は16年度末の寄付額のとりまとめを6月ごろに発表する見通しだが、15年度に続いて16年度も過去最高を更新するとみられる。ただ、制度が普及して納税額が増えるのに伴って、自治体には情報漏洩(ろうえい)対策など新たな課題への対応も求められている。

 ソフトバンクのグループ会社、さとふるが運営するふるさと納税サイトのさとふるは、納税額、件数ともに前年比で4.2倍まで増えた。同社の高松俊和取締役は「テレビのCMを夏以降放映したことや取り扱い自治体数を約2倍に増やしたことが奏功した」と話している。また、全国の1156自治体の寄付を取り扱っているトラストバンクが運営するふるさとチョイスも、ほぼ倍増したとみられるなど、大手サイトの納税額は増加の一途だ。

 自治体に寄付すると2000円を超えた額が住民税や所得税から控除されるふるさと納税は、寄付金獲得のために家電や商品券など返礼品を豪華にする自治体が近年、相次いだことを受けて、総務省は昨年4月、地元の産業と関係性の低い家電などを返礼品として提供することの自粛を求める大臣通知を出した。

 各サイトも通知を受けて返礼品の変更や自粛を自治体に求め、自治体は、福岡県苅田町が本物のフライトシミュレーターの操作など体験型を用意したり、島根県浜田市と三重県松阪市が名物のノドグロと松阪牛をセットで用意したりするなど、返礼品に工夫を凝らすようになった。また、地震や台風など災害が相次いだことから、被災自治体に返礼品を求めない純粋な寄付も各サイトに集まり、さとふるでは、熊本地震など3災害の支援のために約2億円が集まった。

 今年も納税額は増えるとみられるが、自治体は新たな課題への対応に追われている。北海道安平町(あびらちょう)の横谷健主査は、返礼品を提供する自治体が増えたことを受けて他の自治体との返礼品の差別化や、返礼品のやり取りの後も「町のファンになってもらう」ことを念頭に、都心の物産展への案内状送付を検討している。

 北海道網走市で7530件のメールアドレスが漏洩するなど情報漏洩や、ネット上で自治体へのクレームが広がることなど“危機管理”への対応も求められており、さとふるは自治体向け説明会を開いている。横谷主査は「自治体のイメージアップの制度なのに、配送の不備などでイメージダウンにつながるのが怖い」と話している。(大坪玲央)