特別検察官は政権最大の疑惑「サムスン癒着」に照準、狙いは朴槿恵大統領

激震・朴政権

 【ソウル=桜井紀雄】韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と親友の崔順実(チェ・スンシル)被告の疑惑を捜査する「特別検察官」(特検)が12日、取り調べに踏み切った李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長が率いるサムスングループは、崔被告母娘の最大のスポンサーだった。特検は、朴氏と李氏が面談した直後から加速した支援の動きに着目、朴大統領の「犯罪」の立証に照準を合わせているもようだ。

 「誰かに便宜を図る考えは爪の先ほどもなかった」

 朴氏は元日早々、記者団との懇談会で、サムスン傘下の企業合併に便宜を図ったとの疑惑をこう強く否定した。寄せ付けなかった記者を招いてまで「潔白」を訴えたのは、この疑惑が“致命傷”になりかねないと自覚していたからだろう。

 特検が昨年12月の本格捜査開始初日に実行したのも、賛成に回ることで合併を成立させた国民年金公団への家宅捜索だった。賛成の背景に朴政権の圧力があったとみられるが、検察の捜査でも解明できなかった政権最大の疑惑だ。

 李氏が父、李健煕(イ・ゴニ)会長から経営権を引き継ぐ上で合併は不可欠とされたが、外資系株主の反対で難航。公団の賛成は李氏にとって救いの手となった。

 合併決定直後の2015年7月、朴氏は李氏と面談。聯合ニュースによると、朴氏側が面会前に準備したメモに「政府はサムスンの継承問題の解決を望んでいる」と記され、崔被告が実質支配した財団への積極支援を求める文言もあったという。この通りのやり取りが行われていれば、継承問題への助力の見返りに出資を求めたことになる。

 面会直後、サムスン中枢部門の会議で、崔被告の娘でドイツで乗馬訓練をする鄭ユラ氏への支援などについて協議されたとも報じられている。娘の五輪出場を夢見ていたという崔被告にとって財団への出資以上に望むべき支援だった。

 サムスン側は、崔被告母娘がドイツに設立した会社と220億ウォン(約21億円)のコンサルタント契約を結び、35億ウォンを送金。馬の購入費43億ウォンもサムスン側が負担したとされる。支援金は、鄭氏の生活費にも充てられていたという。乗馬関連の支援については、李氏も国会で「適切でなかった」と釈明した。

 李氏が最も必要とした合併への後押し。崔被告が望んだ娘への支援。2つを結ぶ“鍵”は李氏と朴氏の面談とみられ、特検は全容解明に全力を注いでいる。