日露8項目協力プラン、最大の目玉はLNG 基地整備に期待、リスク払拭が鍵
日露首脳会談で合意を目指す8項目の経済協力プランでは、ロシア最大の産業であるエネルギー分野が最大の目玉になる。経済協力が軌道に乗り、資源国ロシアからの輸入が増えれば、世界一の液化天然ガス(LNG)消費国である日本にとって、価格交渉力の強化につながる。
とはいえ、過去の経済協力ではロシア側の圧力で煮え湯を飲まされたこともあり、投資リスクを払拭できるかがプロジェクト実現の鍵を握る。
経済協力プランでは、極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」でのLNG設備の拡張や、北極圏・ヤマル半島のLNG開発事業への投資などが盛り込まれる見込み。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も、ガス田や油田開発に向けた調査でロシア企業と協力する。
日本はLNG輸入量の8.5%を占めるロシアとの取引を拡大し、供給力の確保だけでなく、調達先の多角化を通じて中東諸国など他の取引先との交渉を優位に進めたい考えだ。地理的に近い極東地域でLNG基地が整備されれば、急な需要増加にも柔軟に対応できるようになる。
日本が調達するLNGの価格は中東諸国の影響が大きい原油価格に連動した長期契約が中心で、産出国と消費国の直接取引で決まることが多い。自由化が先行する欧州や、シェール革命が起きた米国でガス価格が低下しているにもかかわらず、日本は割高な取引を強いられている。
また、LNGの余剰分の転売が禁止されるなど、不利な契約形態も残る。ロシアとの関係強化は、こうしたLNGをめぐる課題の改善につながる。
ただ、ロシアとの交渉は予断を許さない。サハリン2に出資した英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事は2006年、ロシア政府の圧力を受け、政府系企業ガスプロムへの経営権譲渡を迫られた。苦い経験の二の舞いを演じないため、相手の出方を十分見極める必要がある。(高木克聡)
関連記事