経常黒字08年度以降で最大 上期20.5%増の10兆3554億円

 

 財務省が9日発表した2016年度上期(4~9月)の国際収支速報によると、海外との経済取引に伴う稼ぎを示す経常収支の黒字額は前年同期比20.5%増の10兆3554億円だった。半期では07年度下期(11兆8560億円)以来の高水準で、リーマン・ショックが起きた08年度以降で最大。ただ米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利し、今後円高が進む可能性があり、黒字は縮小に転じる恐れもある。

 上期の経常黒字拡大は、原油や液化天然ガス(LNG)の値下がりで、輸入額が減った影響が大きい。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は2兆9955億円の黒字で、前年同期(4069億円の赤字)から大幅に改善した。

 一方で、海外投資から得られる利子や配当を示す第1次所得収支の黒字額は、14.1%減の9兆2599億円だった。円高によって証券投資収益の受け取りが減少した。

 サービス収支は8816億円の赤字で、前年同期から赤字幅を拡大した。訪日外国人の増加で旅行収支は黒字幅を拡大したが、知的財産権等使用料の受け取り額が円高で減ったのが響いた。

 SMBC日興証券の宮前耕也氏は「経常黒字の拡大は、そろそろ頭打ちになるだろう」と指摘する。

 懸念されるのはさらなる円高だ。米大統領選でトランプ氏が勝利し、9日の円相場は一時急伸。世界経済の先行き不安から今後も円に買いが集まり、所得収支が悪化する可能性がある。

 さらに足元では原油価格が上昇傾向にある。原発再稼働が一部にとどまるため火力発電への依存度は高く、LNGなどの輸入額が膨らみかねない。旅行収支の黒字を引っ張ってきた訪日外国人の「爆買い」にも陰りが見え、経常黒字の下押し圧力が強まっている。