所得税抜本改革 先送り 配偶者控除、適用対象見直しで調整

 

 政府・与党が、2017年度税制改正で検討していた所得税の抜本的な改革を先送りする公算が大きくなった。「配偶者控除」の見直しでは、当初有力とされた妻の収入を問わず夫婦世帯に適用する仕組みには踏み込まず、現行制度の適用対象を見直す方向で調整する。安倍晋三首相が衆院解散・総選挙に踏み切るとの観測が浮上する中、増税となる世帯からの反発を招きかねない改革に対し、慎重論が強まっている。

 所得税の控除制度などの基本構造は1955年ごろからほぼ見直されておらず、生活実態とのずれが広がっている。政府税制調査会は昨年11月に若年層や低所得層への配慮や多様な働き方に中立な税制といった所得税改革の論点を整理、17年度改正は実行の初手の位置付けだった。

 妻の収入が103万円以下なら夫の課税所得から38万円を差し引ける配偶者控除は、女性の就労を阻害するとして問題視され、安倍首相が9月上旬に見直しを指示。政府・与党では、夫婦なら妻の収入を問わずに適用される「夫婦控除」への転換が有力視されていた。

 だが、対象世帯が現行と比べ大幅に増えるため、夫の年収に制限を設ける必要があり、増税世帯が多くなる。このため、与党内で総選挙や都議選をにらんで、負担増世帯からの反発を懸念する声が浮上。「先送りは仕方がない」(公明党幹部)との見方が広がっている。

 今月中旬から、17年度改正に向けた政府・与党の議論が本格化するが、配偶者控除の年収要件を103万円以下から150万円以下に引き上げる案などを検討。夫婦控除への転換や、現行の所得控除方式から低所得者の負担軽減につながる税額控除方式への移行などは今後の課題とする可能性がある。

 改革の象徴だった配偶者控除見直しが小幅な手直しにとどまれば、所得税の抜本改革自体が後退したとして、野党などの批判を招く懸念もある。

                   ◇

 ■所得税改革の論点

 ・配偶者控除を女性の働き方に中立な制度に見直し

 ・基礎控除を低所得者に手厚く、高所得者には減らす仕組みに見直し

 ・高所得者ほど税負担が軽くなりやすい所得控除方式主体の税体系を低所得者に恩恵が大きい税額控除方式に移行

 ・給与所得控除などの再編や基礎控除の拡大で簡素な税体系に