韓国、輸送業の赤字10億ドル 1~7月統計 需要低迷で輸出減
韓国は、輸出減速などが要因で輸送業が不振に陥っている。韓国銀行(中央銀行)の統計によると、今年1~7月の輸送業の売り上げは合計152億3000万ドル(約1兆5320億円)だが、支払い合計が162億4000万ドルで、収支はおよそ10億ドルの赤字だった。現地英字紙コリア・ヘラルドなどが報じた。
この統計は、海上と航空の国境を越えた人および貨物の輸送・郵便サービス・航空分野で提供される各種サービスを対象に売り上げを合計する。7カ月で10億ドルの赤字は、同行が2006年に統計を開始してから最大規模という。
韓国の輸送業の年間収支黒字額は06年の22億ドルから08年には76億ドルまで増加し、09年は世界金融危機の影響で49億ドルに減少したものの、再び増加に転じて12年には102億ドルに達していた。しかし、その後は外需低迷で輸出が落ち込み、15年には黒字が30億ドルまで縮小した。
なかでも不振が深刻なのが海運分野で、今年1~7月は航空分野が3200万ドルの黒字を維持したのとは対照的に、海運分野は8億9400万ドルの赤字となった。特に海上貨物輸送については、この間の収支が前年同期比で28.2%悪化したという。
専門家は「世界経済の減速が韓国の輸出減少の要因となり、貨物運搬料の下落につながった」と述べ、輸出不振が各社の収益を圧迫したと分析した。今年1月の釜山港の輸送コストをみると、20フィートコンテナ1台当たり159万ウォン(約15万円)となっており、前年同月比で1.4%下落したもようだ。
今年8月には、同国海運最大手の韓進海運が経営破綻し、同社の貨物船が米国など各国の港で入港差し止め措置を受けるといった混乱をもたらした。
破綻を受けて親会社の韓進グループが1000億ウォン、筆頭株主の大韓航空が600億ウォンの資本注入を行うと表明したが、破綻時に海上にあった貨物の陸揚げ費用だけで1700億ウォンが必要ともされる。最大の債権者である国営韓国産業銀行も新たな融資を決定し、陸揚げ費用のめどはついたものの、同社の経営は先行き不透明な情勢だ。
好調な輸出に支えられてきた同国の輸送業だが、足元では輸出の苦戦が長期化している。世界的な需要低迷もあって輸出の急回復が望めないなか、当面は厳しい経営を強いられる局面が続いていきそうだ。(ソウル支局)
関連記事