ビール類酒税一本化が焦点 税制改正、配偶者控除など議論本格化

 

 政府税制調査会が9日に総会を開くのを皮切りに、政府や与党が年末に向けた税制改正の検討を本格化する。2017年度改正では、専業主婦世帯などの所得税負担を軽くする「配偶者控除」の見直しと、麦芽の比率などで異なるビール類の酒税一本化が最大のテーマ。いずれも納税者に損得が生じるのは不可避で、消費者の反発をどう見極めて政治判断するかが焦点になる。

 与党の税制改正作業は11月以降に行われるのが慣例だが、17年度改正は大規模な見直しになるため「例年より早めに作業を始める」(自民党の宮沢洋一税調会長)方針だ。

 ビール類の酒税の税額は現在、ビールが350ミリリットル缶で77円、発泡酒47円、第3のビール28円だが、全体の税収規模が変わらない約55円への一本化を目指す。税額格差が企業の技術革新をゆがめ、国内市場の縮小や税収減、日本産ビールの国際競争力低下を招いていることの解消を狙う。

 実現すれば、ビールは値下げになる一方、発泡酒や第3のビールは値上げになり、「庶民いじめ」との反発を招く懸念がある。ビールの販売比率の低いメーカーには不利になるため、数年の移行期間を設ける方向で調整する。税額が第3のビールと同額で競合商品でもあるチューハイなど炭酸入りの低アルコール飲料が突出して安くなるため、増税する案も浮上している。

 一方、政府税調は所得税が働き方や家族のあり方が多様化する今の社会実態にそぐわなくなったことを踏まえ、税負担を軽くする控除制度全体を見直す提言を11月にもとりまとめる。提言は与党の税制改正議論の材料にもなる。

 専業主婦やパートで働く妻の年収が103万円以下なら夫の課税所得から38万円を差し引く配偶者控除は、夫婦であれば妻の収入にかかわらず一定額を夫の税額から差し引く「夫婦控除」に見直す検討をする。配偶者控除が女性の働き方を制限しているとの指摘から、見直しを通じて女性の社会進出の後押しを狙う。

 麻生太郎財務相はこれに理解を示す一方で「家事をする奥さんの労働が無価値というのがおかしい」と多様な角度から丁寧に議論すべきだとしている。税収減を防ぐための年収制限導入などが議論されるが、自民党の二階俊博幹事長は「専業主婦世帯に大きな負担にならないよう考慮すべきだ」との注文もつくなど、制度設計上の課題は山積している。(万福博之)

 ■2017年度税制改正議論の主な項目

 ≪所得税改革≫

 ・配偶者控除を見直し、夫婦控除を導入

 ・控除制度すべてを見直し、低所得の子育て世帯などの負担を軽減し、高所得世帯は増税

 ≪酒税≫

 ・ビール類の税額を数年かけて350ミリリットル缶あたり55円に一本化

 ・チューハイを増税

 ・ビールの定義を見直し、多様なビールの開発を促進

 ≪少額投資非課税制度(NISA)≫

 ・年間投資上限60万円、非課税期間20年の長期積立枠の創設

 ≪法人税≫

 ・企業の研究開発に対する減税の対象をビッグデータを活用したサービスなどにも拡大

 ・賃上げした中堅・中小企業の法人税減税を拡大

 ≪国際課税≫

 ・多国籍企業によるタックスヘイブン(租税回避地)を使った課税逃れの対策を強化