英EU離脱 各国の財政・金融余力乏しく リーマン後より悪影響長期化?
英国の欧州連合(EU)離脱の世界経済に対する悪影響が、2008年のリーマン・ショック後より長引くのではないかとの見方が広まり始めた。離脱交渉の長期化が予想される上、リーマン時より各国の財政・金融政策の余力が乏しく、どこまで効果的に対応できるか不透明だからだ。世界経済の減速は日本のデフレ脱却を遅らせる要因にもなり、安倍晋三政権の政策手腕も問われることになる。
リスクが長引くことへの安倍首相の危機感は強く、6月29日の日銀との緊急会合でも「中長期的に世界経済の成長軌道を確たるものにするため、リスクに率先して立ち向かう」と述べた。
リスクは主に、金融市場の混乱を通じて広まる。
経済協力開発機構(OECD)の試算では、18年の国内総生産(GDP)が、下落幅の最も大きい英国で1.35%減となる見通し。国際的な自己資本規制強化などを通じ、金融システムがより強靱(きょうじん)になったことから、リーマン時のような金融不安は起きないとみられる。
ただ、英国の離脱交渉が最低2年かかる上、他の国に離脱の動きが広がれば、影響は3年程度で一定の収束を見せたリーマン時より長期化する。みずほ総合研究所の野口雄裕上席主任エコノミストは「EUの枠組みへの懸念が消えなければ、市場の不安定な状態は続く」と警告する。
追い打ちをかけるのは、各国の政策余力の乏しさだ。リーマン後、先進国と新興国は相次いで財政出動を実施し、日米は財政赤字が拡大している。4兆元の財政出動で「世界の景気を支えた」とされる中国も過剰設備に苦しみ、新たな財政出動を打ち出しづらい。
日米欧の大規模な金融緩和策も成果を上げたが、超低金利などで足下の緩和余地は乏しくなっている。
国内の影響に対し、政府は短期的に、秋にまとめる追加経済対策で対応する。加えて中長期的にどこまで戦略的な手を打てるか注目される。
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