タイ、鉄道協力の中国と溝 「過度な」沿線開発権要求を批判
タイ政府が進める鉄道建設計画で、中国との協力関係に溝ができつつある。プラユット暫定首相は当初見込んでいた中国からの融資に頼らず、自力で資金を調達して高速鉄道を整備すると表明。背景には、沿線の開発権を要求するなど中国側の「過度な利益追求姿勢」(タイ運輸省当局者)があるようだが、タイ側も中国に頼らざるを得ない事情を抱えている。
「事業はわれわれの手でやることになった。これは誇るべきことだ」。3月24日、訪中を終えて帰国したプラユット氏は、首都バンコクの軍用空港で記者団にこう語った。
中国の李克強首相との会談で、高速鉄道の路線を当初計画の約3分の1の距離となる東北部ナコンラチャシマ-バンコク間に縮小したうえで、1700億バーツ(約5370億円)に上る費用を自力で調達する方針を説明。李首相は「タイは中国を信頼していないようだ」と不快感を示したという。
中国がタイに急接近したのは2014年5月のタイのクーデター直後。軍事政権と距離を置く欧米や日本を尻目にいち早く政権を承認し、同年11月には他国に先駆け鉄道建設の協力でも合意した。事業参入を目指していた日本にとって「スピード感はまねできない」(外交筋)ほどの早業だった。
だが、具体的な協力をめぐる中国とタイの交渉は難航した。タイ側が求める建設資金の融資条件を中国が受け入れなかったうえ、中国側が鉄道沿線の大規模な不動産開発の権利を要求し続けたことが原因とされる。
タイのメディアには中国との協力による鉄道計画を批判する記事が目立ち始めた。交渉過程をよく知るタイ政府当局者は「中国は建設資材、労働者など全て本国から持ってこようとするうえ、金利などの条件面でも高圧的な姿勢を続けた」と語る。
ただ、タイ政府は資金面以外の工事や車両調達、運行管理など多くの事業を中国側に任せる予定を変えていない。両国が協力する鉄道路線は他にもあり、別の政府当局者は「中国はタイが在庫を抱えるコメと天然ゴムの大量購入を約束している。他国にはできないことで、われわれにとって重要だ」と打ち明けた。(バンコク 共同)
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