2015.10.10 14:30
「映像の魔術師」と言われるカナダ出身の演出家、ロベール・ルパージュの代表作「Needles and Opium 針とアヘン」が、最新の映像テクノロジーを駆使した二人芝居として来日している。
「針とアヘン」は映像と舞台の革新的な融合として「ルパージュ・マジック」と呼ばれる手法を世界に知らしめた作品。1993年の初来日では一人芝居として上演されたが、今回は2人の俳優が出演する形で刷新、世界ツアーの一環としての来日だ。
作品は仏作家、ジャン・コクトーと米ジャズミュージシャンのマイルス・デイビスの、49年時点における活動がモチーフ。この年、コクトーは映画「双頭の鷲」をニューヨークで上映した後、フランスに戻り、米国への憧憬と幻滅の気持ちが入り交じった評論「アメリカ人への手紙」を書いた。一方、マイルス・デイビスはモダンジャズを広めるべくフランスに渡って、熱烈な歓迎を受けた。
実はコクトーはアヘンに依存、デイビスはヘロイン中毒。その苦しみが、失意のうちにパリにたどりついた、現代のあるカナダ人男性の頭の中に投影されていく。苦しみを忘れようとする男性が内面を凝視すると、コクトーの言葉やスケッチ、デイビスの音楽が脳内を駆け巡り、スペクタクルな離脱症状が始まる。映像や身体的表現を駆使して現代と49年、コクトーとデイビスの間を自由に行き来する不思議な舞台となりそうだ。(藤沢志穂子/SANKEI EXPRESS)
【ガイド】
10月12日まで、東京・世田谷パブリックシアター(電)03・5432・1515。