STAP論文の「ほぼ全て否定」 理研調査委、ES細胞混入を認定

2014.12.27 08:30

 STAP細胞論文に関する理化学研究所の調査委員会は26日、STAP細胞は既存の万能細胞である胚性幹細胞(ES細胞)の混入に由来する可能性が高いとの調査結果を発表した。混入が故意か過失によるものかは判断できないとした。STAP細胞は新型万能細胞とされたが、その論文内容は「ほぼ全て否定された」と結論付けた。

 調査委は論文の筆頭著者で元理研研究員の小保方晴子(おぼかた・はるこ)氏(31)と、共著者の若山照彦山梨大教授(47)の研究室に保存されていたSTAP関連の細胞についてゲノム(全遺伝情報)解析などを行い、その性質と由来を詳しく調査した。

 その結果、STAP細胞に増殖能力を持たせたSTAP幹細胞は全てES細胞に由来すると断定。STAP細胞もES細胞に由来する可能性が高いとした。

 STAP細胞をマウスに移植して作った腫瘍や、STAP幹細胞をマウスの受精卵に入れて作った胎児は、論文で万能性の証拠とされたが、いずれもES細胞に由来する可能性が非常に高いと分析した。

 これによりSTAP細胞が万能性を持つとした論文の結論は否定され、「全てES細胞の混入に由来するか、それで説明できることが科学的な証拠で明らかになった」とした。調査委員長の桂勲国立遺伝学研究所長は会見で「STAP細胞はES細胞だとほぼ断定した」と述べた。

 ES細胞はSTAP幹細胞の作製時に混入したと認定。「これだけ何回も混入したことは、誰かが故意に混入した疑いを拭うことができない」と指摘したが、小保方氏らは混入を全面的に否定しており、混入者は特定できないとした。

 新たに捏造2件

 また調査委は小保方氏による2件のデータ捏造(ねつぞう)を新たに認定。小保方氏が担当した図表の元データはほとんど存在せず、「責任ある研究」の基盤が崩壊したと厳しく指摘した。若山氏と、論文作成を主導し8月に自殺した理研の笹井芳樹氏は「明らかに怪しいデータがあるのに、それを追求する実験を怠った」として責任は大きいとした。

 ≪真相あいまいなまま幕引き≫

 理研の調査委員会はSTAP細胞とES細胞の遺伝子を詳細に解析し、両者がほぼ一致することを科学的に立証した。STAP細胞は既に論文が撤回され、小保方晴子氏の検証実験でも再現できておらず、その実在性は論文発表から約11カ月で全て否定された。

 ただ、ES細胞が意図的に混入されたのかどうかという核心部分は謎のままだ。科学界と社会を巻き込み揺れ続けたSTAP問題は、真相はあいまいなまま幕を下ろすことになる。全容解明は再発防止のためにも不可欠だっただけに、後味の悪さを残した。

 調査では、論文で小保方氏が担当した図表の元データがほとんど存在しないことも明らかになった。本当に行われた証拠がない実験も複数あった。単にデータ管理がずさんなだけでなく、実験が虚構だったのではないかと疑われても仕方がないだろう。

 STAP問題の決着が遅れた背景には、実態解明に及び腰だった理研の対応のまずさがあった。4月の調査は対象を限定して事態を矮小(わいしょう)化。ES細胞が混入したと判断する決め手となった今回の保存試料の解析には当初は消極的で、追加調査も不要としていた。早く本格調査に踏み切っていれば、ここまで問題は長期化しなかったはずだ。

 調査委は、全ての研究者はSTAP問題を自分の研究室でも起こり得る問題として考えるよう求めた。この不幸な出来事から何を学び、どう行動するのか。科学者たちに突き付けられた重い課題だ。(長内洋介/SANKEI EXPRESS)

 ≪「自ら混入考えられない」≫

 理研の調査委員会による報告書公表を受けて、小保方晴子(おぼかた・はるこ)氏の代理人を務める三木秀夫弁護士は26日、大阪市内で取材に応じ「困惑している。小保方氏が自らES細胞を混ぜたとは考えられない」と話した。

 三木弁護士は「本人はES細胞の混入自体ないと信じていた」とも述べた。

 また、小保方氏が参加したSTAP細胞の有無を調べる検証実験と同時に今回の調査が行われたとした上で「かわいそうだ。調査委の聞き取りに100パーセント対応できたか不安に思う」と懸念を示した。

 弁護団も小保方氏も報告書を受け取っておらず、中身についてはコメントできないと説明した。小保方氏について「体調が非常に悪く連絡が取りにくい状態。ES細胞混入の指摘について話し合えていない」と話した。(SANKEI EXPRESS)

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