2014.11.10 08:30
11月2日にラテンアメリカ諸国で盛大に行われる「死者の日」は、日本のお盆のような行事だ。家族や友人が集まり、故人に思いをはせて語り合う。とくにメキシコでは、酒や食べ物を持ち寄って墓に集まり盛大な祭りが催され、華やかなパレードも行われる。南米各地で行われたさまざまな死者の日の様子を写真で追ってみた。
カトリック教会では11月を「死者の月」としているが、とくに2日は、教会の典礼暦で亡くなったすべての信者のために祈る「死者の日」と定めている。ローマ法王フランシスコは1日、ローマの墓地を訪問し、墓参りに訪れた市民とともにミサを行い、翌2日には、バチカンで祈りの集いを行った。法王は厳かな雰囲気の中、「墓地は最後の目覚めを待つ安息の地である」と説教した。
かたや陽気なラテンアメリカの国々では、「死者の日」の祝い方もさまざまだ。日本のお盆とはまったく様子が異なる。
ブラジル・サンパウロ州のレジストロ市では、今年60回目となる南米最大規模の灯籠流しが行われ、約2500基の灯籠が市内を流れるリベイラ川の水面を鮮やかに彩った。リベイラ川で水難事故に遭い死亡した日本人を慰霊するために始まり、年々規模が拡大、故人を供養する行事として定着したという。
ラテンアメリカで「死者の日」のもっとも盛んな国といえばメキシコ。数千年前から受け継がれる先住民の風習とスペイン侵略後のカトリック信仰が混合された独特な祭礼であり、「死者にささげる先住民の祭礼行事」として2008年にユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。一年の中で、最もメキシコらしさを感じる行事で、その独特な風景を体感しようと世界中から多くの観光客が訪れる。
≪メキシコの町はガイコツだらけ≫
この日、メキシコの町はガイコツだらけになる。元来メキシコでは祖先のガイコツを飾る習慣があり、その名残で死者の日にはさまざまな場所でガイコツを見かける。
ガイコツのマスクやコスプレに始まり、ガイコツの人形やオブジェ、ガイコツ形のパンやチョコレートまで登場する。そのため、別名「ガイコツ祭り」と呼ばれるほどだ。
死者のお墓に「オフレンダ」と呼ばれる派手な装飾を施した祭壇を作り、オモチャやテキーラの瓶、メキシコ伝統のアトーレという飲み物やさまざまな食べ物など故人の好きだったものをお供えする。祭壇は故人の魂が訪れて、飲食をし、休憩する場所の意味があるという。お墓にもさまざまな装飾やイルミネーションが施される。故人の墓の前で酒を酌み交わしたり、食事をとったり、マリアッチ楽団を呼んで故人が好きだった歌をリクエストしたりする。故人の魂がこの世に戻っている間に、生きている家族や仲間と交流を楽しむという意味があるという。
さらに仮装する習慣もあるので、さながらハロウィーンのようだ。墓地のそばには食べ物屋などの屋台も出て一層にぎやかになる。
死者の冥福を思いながらも、明るく陽気に楽しく祝うのがラテンアメリカ流の死者の日の祝い方なのだろう。(EX編集部/撮影:AP/SANKEI EXPRESS)