むだではなかった虫垂 大和田潔

2014.8.25 07:35

 【青信号で今週も】

 「おなかが痛くて、病院に行ったらモウチョウだったので手術した」という話や、「おなかの手術をしたときに、うむとよくないといわれて、ついでにモウチョウをとってもらった」などという話を聞いたことがあるかもしれません。日常的に「モウチョウ」と呼ばれているものは、盲腸の先にある数センチの細長い「虫垂(ちゅうすい)」と呼ばれる臓器です。

 草食動物では盲腸は発達し、機能しています。児童書でお世話になったウサギ専門店「うさぎのしっぽ」の『うさぎ総合辞典』では、「うさぎは草食動物だが、牛のようにいくつもの胃を持たず一つの胃のみをもっている。そのかわりに、草を栄養にするためのシステムとして巨大な盲腸をもっている。この盲腸で、いったん発酵させ吐き出して再度食することで、ビタミンや栄養を摂取している」と紹介されています。

 腸の免疫については、このコラムでも「腸の免疫と花粉症」(2013年3月)というタイトルでお伝えしたことがあります。腸は食べ物を吸収するために数多くのヒダがありますが、そのヒダが欠けているところにパイエル板という免疫組織が埋め込まれています。

 竹田潔・大阪大学教授のグループは、虫垂の大切な働きを明らかにしました。人間の虫垂には、豊富にリンパ球などの免疫細胞が集合していることが知られていましたが、腸の免疫にどのような働きをしているかは不明でした。

 虫垂リンパ組織の構造は、小腸のパイエル板とほぼ同じ構造でした。そこで、虫垂を切除したマウスを観察してみると、大腸の免疫細胞の数が減少していて、腸内細菌のバランスも崩れていました。さらに、腸に存在する免疫細胞を解析した結果、小腸のパイエル板は小腸の免疫細胞を、虫垂のリンパ組織は大腸の免疫細胞を供給していることが判明しました。

 つまり、虫垂は下痢や便秘に大きな影響を与える大腸の腸内細菌や免疫機能を調節する大切な臓器であることが判明したのです。腸内細菌は外から補うことも可能です。ヨーグルトやぬか漬けで乳酸菌を補給することも有用です。虫垂はむだな臓器ではなく、炎症がない限り持っていた方がよいもののようです。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)

閉じる