「反動減ない」「想定の範囲内」62% 消費税増税 企業アンケート

2014.5.2 10:00

 消費税率が8%に引き上げられてから5月1日で1カ月が経過した。産経新聞社は主要企業123社にアンケートを実施。増税後の国内需要の状況について、6割超の企業が「反動減はまったくない」や「想定の範囲内だった」と回答した。また、今年12月に判断される消費税率10%への引き上げの是非については、過半数の企業が「引き上げるべきだ」とした。

 消費税増税後の需要状況について37%の企業が「想定の範囲内で反動減がった」と回答。「高額品を中心とした売り上げの減少があった」(小売り)との回答もあったが、「前回の消費税増税時ほどの落ち込みにはならない」(鉄鋼)など、「業績に与える影響は大きくない」(食品)との意見が目立った。「反動減はまったくない」とした企業も25%に達した。

 「想定より大きい反動減があった」と回答した企業は2%で、「商談の長期化や反動減が発生しており、4月以降も反動減が続く」(住宅)と強い警戒感を示す回答もみられた。

 反動減が一巡し需要が回復する時期については、30%の企業が今年の「7~9月期」と回答。「4~6月期」とした企業は11%あり、今年の10~12月期と回答した企業も11%だった。

 安倍晋三首相(59)は今年12月に消費税率10%への引き上げの可否を判断するが、「日本経済の状況にかかわらず引き上げるべきだ」と「状況が大きく悪化しない限り引き上げるべきだ」を合わせ、56%が再増税を容認した。理由では「財政健全化を優先すべきだ」(サービス)や「持続可能な財政運営は安定的な経済成長にとって重要な課題」(銀行)との意見が目立った。

 もっとも、「状況が大きく改善しない限り見送るべきだ」と「状況にかかわらず引き上げを見送るべきだ」との回答も計15%あった。「その他」と回答した11%の企業のなかにも、「経済状況の変化に応じて改めて具体策を慎重に判断すべきだ」(化学)など、〝引き上げありき〟を懸念する意見もあった。

 アンケートは4月中旬から下旬にかけて実施した。

 ≪中国経済の停滞懸念 東南アジアシフト鮮明≫

 産経新聞社が123社に実施したアンケートでは、消費税増税による「反動減」に対する企業の安堵感が浮き彫りになった。景気の先行きに関しても強気な姿勢が目立ち、2014年度の国内景気について6割が「改善」すると回答。ただ、増税による今後の悪影響を懸念する声に加え、中国経済の減速を警戒する意見も根強く、景気が「悪化」するという回答も16%に上った。

 国内景気が前年度と比べてどうなるかの予測を聞いたところ、「改善する」と「やや改善」が合わせて60%。「雇用環境・企業収益の改善から景気回復の足どりは崩れない」(銀行)との見方だが、多くの企業が「堅調な米国景気」や「海外経済の回復」など世界の経済状況が改善することを前提としているのも事実。

 国内景気の懸念材料を2つまでの複数回答で聞くと、「消費税増税による消費の落ち込み」が67社と最多だが、2番目に多かったのは「中国の景気減速」(40社)。「輸出先として大きなシェアを占めているから」(保険)なのは当然としても、「シャドーバンキング(影の銀行)や過剰設備、環境汚染」(商社)といった問題を不安視する意見もあった。

 中国経済への警戒感の表れとして、リスク分散を図る企業の姿勢も目立つ。中でもインドネシアが注目されており、「今後3年間で市場として有望視している国」(2つまでの複数回答)に48社が挙げた。「将来の中間所得層の増大」(小売り)などの理由からだ。その他、インド(27社)やベトナム(22社)も有望視されており、企業の東南・南アジアシフトが鮮明になっている。

 一方、国内景気の懸念材料としては、31社が「原油・原材料価格の上昇」を指摘。さらに、「政府の成長戦略の停滞」を問題視する企業も多く見られ、「企業の設備投資の鈍化、個人消費の低迷につながりかねない」(エネルギー)、「持続的な成長には、海外流出が続いている設備投資の国内回帰を促す環境整備が必要」(建設)などの声があった。(SANKEI EXPRESS)

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