テレビ報道の「顔」が大きく変わろうとしている。放送業界への政治的な“風当たり”が強まる中、歯にきぬ着せぬ看板キャスターらの相次ぐ降板。現場には政権の意向を忖度(そんたく)し報道内容を自制する雰囲気もあるといい、識者からはテレビジャーナリズムのあり方を危ぶむ声が上がっている。
「視聴者は降ろされた印象持つ」
3月末での降板を発表したのはテレビ朝日「報道ステーション」メーンキャスター、古舘伊知郎さんとTBS「NEWS23」アンカー、岸井成格さん。NHKも「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターの降板を検討している。
番組での発言が政権側から何度も批判された古舘さん。降板の発表会見でも「キャスターは反権力の側面がある」と自説を曲げなかった。
大物政治家にも鋭い質問を浴びせる国谷さんも「降板させられるのでは」との臆測が何度も流れていた。
岸井さんは番組で、安全保障関連法案に対して「廃案に向けて声を上げ続けるべきだ」と発言。保守論客が名を連ねる団体から「政治的に公平であることを定めた放送法に違反する」と批判される中での降板発表だった。
「各局それぞれ事情があるのだろうが、3人続くと、政権に批判的だったから降ろされたという印象を視聴者が持つだろう」と指摘するのは砂川浩慶・立教大准教授(メディア論)。