【ソーシャル・イノベーションの現場から】
「2025年問題」とは、ベビーブームで誕生した700万人を超える団塊世代がこの年に75歳以上の後期高齢者となることを言う。日本の4人に1人が後期高齢者となる計算だ。少子化も進む中、医療・介護保険料の払い手と受け手のバランスが取れなくなることを危惧する声は多い。
その打開策として、政府は医療・介護費のかさむ入院治療を減らし、地域の資源を利用した在宅ケアを促す政策を推進している。その要となる地域資源として注目されているのが、訪問看護ステーションだ。利用者の自宅を訪問してケアを提供する「訪問看護師」の拠点である。
病気ではなく人を中心に
大阪市東成区にある「医療看護110番リハビリ訪問看護ステーション」は、この地区で唯一、24時間365日の定期訪問を行っている。代表理事の高岸博子さんは、看護学校を卒業後、病院で33年間勤務した。その中で、「本当の看護」が見えなくなっていったという。「看護には2つの要素があります。一つは医師の指示の下で行う治療の補助、もう一つは患者の身の周りのお世話です。でも、病院では後者はヘルパーさんに任せられていて、気づいたら私の仕事は医師の補助ばかりでした」と高岸さんは話す。