南米の音楽というと、いわゆるラテンと呼ばれる音楽のイメージが強い。例えば、サンバやサルサのようなにぎやかなダンスミュージックは、たしかにこのエリアでメジャーな存在だ。しかし、その一方で繊細でかつ内省的な音楽も存在する。その代表的なものが、ボサノバとタンゴ。前者はブラジルで1950年代に生まれ、静かでまったりとしたイメージが強いだろう。後者はいわゆるダンスのための音楽にもかかわらず、独特の哀愁を醸し出すのが特徴だ。タイプは違うが、日本人に人気があるということでも共通している。
都会的なボサノバ
ボサノバは爽やかな潮風の香りがするという印象もあるが、ヴィニシウス・カントゥアリアにかかれば、それは漆黒の夜の音楽へと変身する。ブラジルのアマゾンで生まれたヴィニシウスは、カエターノ・ヴェローゾをはじめ大物たちに認められてソロデビュー。その後、新天地を求めてニューヨークに渡り、都会的な現代ボサノバを作り続けている。